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こうやって支払停止の抗弁をせよ!
~ クレジットの契約構造・支払停止の抗弁事由・商行為 ~
第三者の不正使用とカード規約の解釈に基づく免責
クレジットカードの紛失・盗難・不正使用等があった場合のカード会員の責任については、
一般的にカード規約で次のように規定されています。
「 会員は直ちにカード会社に届け出て、また警察署に紛失届・被害届を提出し、その受理
を証明する文書を出すること。
カード会社が届出を受取った日から遡って60日目以降に生じたカードの不正使用につい
ては、会員は支払責任を負わないものとする。 ただし、次の場合は除く。
イ 会員の故意又は重大な過失に起因する場合
ロ 会員の家族、同居人、留守人がカードを不正使用もしくは窃取した場合、または
これらの者がカードの不正使用もしくは盗難に関与した場合
ハ カードの貸与禁止条項に違反して他人にカードを使用させた場合
ニ その他規約に違反する行為に起因して不正使用が生じた場合
ホ 会員が保険会社の行う被害状況調査等に協力しない場合
近年、判例にはカード規約の解釈・適用の問題であるとして、第三者がカードを不正使用
した際に加盟店側に不正行為・暴利行為があり、カード会社の請求は権利の濫用あるいは
信義則違反にあたるとして会員の責任を免責する判断を示したものがあります。
1 京都地裁平成25年5月23日判決
<事案> 未成年者の子が親名義のクレジットカードを無断で持ち出しキャバクラで使用
したケース。
「 信販会社の義務が十分に果たされずに不正使用が拡大し、しかも窃盗犯人と加盟店と
の間の原因契約が公序良俗に反するという場合、裁判所としては、加盟店の公序良俗違
反行為に対する寄与の度合い、信販会社による本人確認の状況等の諸事情を総合的に
考慮し、不正使用による損害を会員に転嫁することが容認し難いと考えられる場合は、
盗難カードの不正使用があった場合を規律する約款上の条項に基づく会員に対するカー
ド利用代金請求が権利の濫用となる(あるいは信義則に反する)として民法第1条2項な
いし3項に基づく公権的解決を図ることができる」との規範を示した上で、
「 キャバクラ店の代金480万円分については、未成年者であるにも拘わらず接客契約を
締結してその履行を求めたことにつき加盟店側に故意又は重過失があると認めら
れる、あるいは、不正行為・暴利行為にあたると認められることを理由として民法第
90条に抵触して無効となる」と判断し、カード会社が無効とされた480万円の支払を
請求することは、権利の濫用ないし信義則に反するものとして許されない」と判示して
います。
2 長崎地裁佐世保支部平成20年4月24日判決
<事案> 同居の長男A(成人)が無断で父名義のクレジットカードの識別情報を取得して
インターネットの利用料を決済したケース。
( カード券面上から明らかなカード番号・カードの有効期限に依拠したカード識別情報だ
けでカード決済方法を利用することが可能で、暗証番号等は不要であった)。
「 会員に対しその帰責性を問わずに支払責任を負担させることは、民法の基本原則であ
る自己責任の原則に照らしても疑問がある。 約款上の規約は、会員側が自己に帰責
性のないことを更に主張立証し、補償規約の適用を受けようとする余地を排斥する趣旨
まではない。 会員は自己に重過失がないことを主張立証すればカード利用債権の
支払いを免れることができる」と判示し、
「 カード会社としては、暗証番号のに入力を求めるなど、会員以外の者による不正利
用を排除するためのシステムの構築を求められていたというべきである。 カード
会社はそのようなシステムの構築をせずに、会員にカード識別情報の管理について帰責
性を問うことは出来ない」として、会員に支払責任はないとしました。
3 東京地裁平成27年8月10日判決
<事案> Aは1時間4000円でキャバクラに入ってから店内で眠ってしまい翌朝の精算の際
にクレジットカードを渡した。 その後、代金が100万円だと知ったAはクレジットカードを取
り返した。 Aは従業員と話し合った結果、代金を5万円とすることで合意し、5万円を支払
って店を出た。 しかし、クレジットカード会社からは78万円の請求が後になって届いた。
Aがクレジットカードを渡していた間に、従業員がカード決済していた為である。
Aが支払を拒否しているとクレジットカード会社が提訴した。
クレジットカード規約には、「盗難、詐取、横領又は紛失に係るクレジットカードが第三者に
より不正使用された場合における利用代金の支払いについても会員本人の責任とした上で、
一定の要件の下で会員の損害をクレジットカード会社が補填する」と規定されていました。
上記判決では
「 列挙された事由は例示的なものであって、それ以外の態様により会員の正当な意思
によることなく占有が移転されるなどしたクレジットカードが不正使用された場合についても、
当該規定が適用される」とし、
「 当初の請求は意図的な過大請求であり、そのような請求が行われることを認識せずに
クレジットカード交付したことは、被告の正当な意思によらない占有移転であり、
店舗従業員が過大請求額に基づく利用があったとする手続きをとったことは不正請求にあ
たるから、上記規約の適用があり、被告の立替金の支払いは免責され」と判示しました。
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