インターネット行政書士のフロンティア戦略 第73号
平成21年10月29日発行
民事法務のフロンティアに鉱脈を目差すインターネット行政書士のマインドと戦略。
今回の目次
□ 信義則でフロンティアを拓け
☆ 信義則とは何か
☆ 付随的義務としての助言・指導義務
□ 信義則でフロンティアを拓け
悪徳業者のやり方から法律の不備や法の隙間を教えられることが多々あります。
例えば、リース契約で販売業者に騙されと思っても原則として解約が出来ませんし、
クレジット契約では商行為ならクーリング・オフも支払い停止の抗弁も出来ません。
しかし、諦めるのはまだ早いのです。
ネットで調べて見ると、クレジット会社が販売店の悪徳商法を知り得る立場にあった場合、
支払いを請求することは信義則に反するとした判例を発見したりします。
つまり、裁判所は信義則を消費者保護の為の最後の砦として使っているのです。
この信義則が内容証明郵便で武器として使えないものかと、私は考えています。
☆ 信義則とは何か
民法第1条第2項は「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければ
ならない」と規定しています。 これが信義誠実の原則(条理ともいいます)というもので、
略して信義則(しんぎそく)と云います。
要するに、当該具体的な事情のもとで、相互に相手方の信頼を裏切らないように行動
すべきであるという法原則です。
1 まず、信義則は法律行為の補充的解釈、修正的解釈の最後の基準となります。
例 民法第715条第3項に基づき使用者が被用者に行う損害の賠償又は求償の請求は、
信義則上相当と認められる限度とする(最判昭和51年7月8日)。
2 次に、以下の機能を営みます。
イ 社会的接触関係にある者どうしの規範関係を具体化する機能
例 債務者は契約目的達成の為にどのような付随的義務を負うべきか。
・契約締結協力義務、重要事項開陳義務、保護義務、助言・指導義務・・・・。
・借主の違反が信頼関係を破壊する恐れがない時は、信義則上貸主は解除権を行使しえない
(最判昭和41年4月21日)。
ロ 制定法の規定が存しない部分を補充し、さらには制定法の形式的適用による
不都合を克服する機能(信義則の分身として営まれる)
信義則の分身の主なものに、次の4つがあります。
A禁反言(きんはんげん、エストッペルの原則)・・・・・自己の行為に矛盾した態度を
取ることは許されない。
例 時効完成後に債務を承認した者の時効援用は、信義則上認められない(最判昭和41年4月20日)。
Bクリーハンズの原則・・・・自ら法を尊重する者だけが法の尊重を要求することが出来る。
※ 民法第708条第1項(不法原因給付)は条文に具体化された例である。
例 ヤミ金には支払った元本と金利の全額を損害賠償として請求が出来る(最判平成20年6月11日)。
C事情変更の原則・・・・契約締結後その基礎となった事情が、当事者の予見し得ない事実の
発生によって変更しこのため当初の契約内容に当事者を拘束することが極めて苛酷に
なった場合に、契約の解除または改定が認められる(我妻榮)。
※ 借地借家法第11条(地代等増減請求権)は条文に具体化された例である。
D権利失効の原則・・・・権利者が権利を長い間行使せず、相手方がその権利はもはや
行使されないものと信頼すべき正当の事由を有するに至り、その後にこれを行使する
ことが信義誠実に反すると認められるような特段の事由がある場合には、権利行使は
許されない(最判昭和30年11月22日)。
※ なお、CとDの原則を適用した判例は →殆どありません。
☆ 付随的義務としての助言・指導義務
信義則を深めるには判例研究に限りますので、これからは時々判例を紹介して行きます。
さて、今日は社会的接触関係にある者どうしの規範関係を具体化する機能としての信義則が
使われたケースです。
税理士の相続税の修正申告に関する委任契約で、その付随的義務として助言・指導義務
があるとした判決がありました。
「 相続税の修正申告を受任した場合には、善良な管理者として依頼者の利益に配慮する
義務があることはもちろん、・・・・法令の許容する範囲内で依頼者の利益を図る義務がある
というべきである。 そして、租税の申告に伴い租税の納付が必要となるのであり、依頼者に
納付の時期及び方法について周知させる必要がある。
・・・・修正申告に当っては、相続税の納付がいつ必要であるのか控訴人らに説明し、その
納付が可能であるかどうかを確認し、これが出来ない場合には延納許可申請の手続をするか
どうかについて控訴人らの意思を確認する義務があるというべきである。
このような納付についての指導、助言を行うことは、本件の事情のもとにおいては、
単なるサービスというものではなく、相続税の確定申告に伴う付随的義務であり、
この懈怠ついては債務不履行責任を負うものと解するのが相当である」
(東京高裁平成17年6月19日判決)。
指導・助言義務を懈怠したとして損害賠償を請求される危険があるのですから、
税理士のみならず他の隣接法律専門職種の人も安閑としてはいられなくなりました。
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