内容証明郵便でブレイク ! 第9号
平成15年11月14日発行
今回の目次
□ まず副収入は入らないと思え・・・内職・モニター商法
□ 私の経験談
□ まず副収入は入らないと思え・・・内職・モニター商法
まず事例です。
『専業主婦のAさんは、自宅で誰でも出来る内職がありますというB社の
新聞広告を見た。電話をして聞くと、パソコンの簡単な仕事で、「月5、6万円は
絶対稼げる」という。そこで、AさんはB会社まで出かけ詳しい説明を受けた。
最初、パソコン代とパソコンの技能向上の通信講座の費用として計50万円掛かるが、
通信講座を3ケ月間受講し、検定試験に合格すれば、Bが仕事を発注するという。
初期投資に50万円掛かるが、1年で回収出来る金額だし、
1年後からは毎月5万円入るなら安いものだと、Aさんは思った。
この機会にパソコンの技能を修得出来れば、一生稼げると思い、
クレジット契約に署名した。
しかし、検定試験に中々合格させず、6ケ月後にやっと合格したものの、
技能のランクが低いことを理由に仕事がほとんど来ない。
Aさんはとても不安になり、契約を解除したいと考えている。』
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これが、近時トラブルが急増している内職商法です。
特定商取引法では、「業務提供誘引販売取引」と呼んでいます。
要するに、内職という業務提供を誘い水にして、商品等を買わせる商法です。
後から入る収入で購入代金の元が直ぐに取れると信じ込ませて、
パソコン等を買わせるのが狙いなのです。
一方、モニター商法とは、商品を購入して利用した感想を提出すれば、
毎月モニター料が入るというのが謳い文句で、布団・着物・浄水器などを
買わせる商法で、やはり「業務提供誘引販売取引」とされます。
内職商法もモニター商法も、まず仕事や収入はないと、
思っていい悪徳商法なのです。
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さて、Aさんはどうすれば救済されるのでしょうか・・・・・。
まず、クーリング・オフは、契約書の交付があってから20日以内なら出来ます。
ただ、契約書に記載すべき内容の要件は結構厳しいですから、
記載に不備があれば、20日以後でも可能です。
次に「月5、6万円は絶対稼げる」といったのに、実際は仕事がほとんど来なかった
のですから、業者は「不実の告知」又は将来の不確実な事項に関し、
「断定的判断の提供」をしたことになります。
そこで、クーリング・オフを行使出来なくても、おかしいと気付いてから6ケ月以内なら、
消費者契約法により取消が出来ます。
それから、「業務提供誘引販売取引」の契約をして、肝心の「業務提供」がない
のですから、民法により債務不履行による契約解除も当然出来ることになります。
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では、クレジット契約の方はどうなるのでしょうか・・・・。
業者との契約を解除しても、クレジット会社からの請求がストップするとは限りません。
そこで必要になるのが、「支払停止の抗弁」の通知です。
「支払停止の抗弁」とは、割賦販売法第30条の4で規定された消費者の権利で、
販売店に対する「抗弁事由」があれば、クレジット会社にも対抗出来るとするものです。
つまり、支払を拒否することが出来るのです。
「業務提供」がないこと、或は契約を解除したことは、
「抗弁事由」であり、クレジット会社にも主張出来るのです。
クレジット会社への「支払停止の抗弁」の通知は、内容証明郵便で行いましょう。
そこで、Aさんは既払いクレジット代金の返還も請求出来るわけです。
ただし、Aさんは通信講座でパソコンの技能修得という利得を得ていますから、
それと清算した残金が戻ることになるでしょう。
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内職・モニター商法、つまり「業務提供誘引販売取引」の規制は、
旧訪問販売法時代にはまだなく、平成13年6月1日施行の特定商取引法から
追加された規定で、同時に割賦販売法も改正されて、
業務提供の不履行も抗弁事由とされました。
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そこで、「業務提供誘引販売取引」のポイントを整理して見ます。
・消費者が業者の営業所等で契約しても対象になります。
・適用対象の消費者とは、「提供される業務を事業所等によらないで行う個人」
に限られます。つまり、消費者が事務所を設けたり、従業員を雇ったりして、
個人的労務の範囲を超える規模と形態を持つに至れば、
「事業」と見なされ、適用されません。
しかし、業者が設けた施設で従事する消費者には、適用されます。
・業者は、契約締結前に取引の概要を記載した「概要書面」を、契約時には
「契約書面」をと、2つの書面を交付する義務を負います。
・業者は書面や広告に、提供する業務の内容、報酬の条件等を明確に記載する
義務を負います。
例えば、「当社のご契約者総数の65%の方は、過去1年間にわたり
毎月5万円以上の収入を上げています」というように、記載しなければならない。
・購入商品・役務が割賦販売法の指定商品に該当していれば、
業務提供の不履行による解除その他は「抗弁事由」となり、
クレジット会社へ支払停止の抗弁を主張出来ます。
Bのような悪徳業者は、トラブルが目立ち始めると、
あっという間に倒産してしまいます。
倒産すると、クレジット会社の対応も厳しくなりますから、
おかしいと思ったら、倒産する前に早急に手を打ちましょう。
□ 私の経験談
実をいいますと、私も内職商法のトラブルに遭った経験があるのです。
今から15、6年前のことです。まだその頃は内職商法という言葉もありません。
ステンドグラスの教室に3ケ月通って技能をマスターすると、
製造を発注するという触れこみで、初め材料費・講習料に50万円掛かるが元は
直ぐに取れるからというものです。
なぜこんなことに乗ったかといいますと、ステンドグラスの制作に興味があったことと、
趣味と実益を兼ねたところが面白かったのです。土・日に好きなことをやれて、
それで小遣いも入って来るならこんないい話もないと思ったのです。
しかし、教室に通い始めて1ケ月後だったでしょか、
追加の材料費だといって別途高額な請求をするのです。
これは変だ、習っている技術も特許を取っているというが、何となく安っぽくて、
こんなのが商品になるのだろうか・・・・・。
という気が段々して来たのです。
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後で発注するという話も多分嘘だろうという気が強まり、解約することにしました。
それまで、丸専手形というので25万円払ってました。これをどう取戻すかです。
まず、県の消費者生活センターに相談すると、「へえ、そんな商売がある
のね、」とか、まるで木で鼻をくくるような態度。「無料の法律相談があるよ」というので、
行って聞くと、今度は担当の若い弁護士が、「25万円くらいなら、くれてやったら」です。
悪徳商法が、今のようには騒がれていない時代のことです。
相談員も弁護士も、こんな殿様商売をやって平気だったのです。
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結局、自分で簡裁に提訴することにしました。相手は準備書面を提出して来たものの、
期日に欠席したので、勝訴の判決です。判決正本が相手方に送達されると、
電話が掛かって来ました。「銀行の口座番号」を教えてくれというではないですか。
口座で25万円の入金を確認した時は、相手はそれほど悪徳ではないかもと、
思ったほどです。
しかし、それからトラブルが増えだし、新聞やテレビでも報道され、
やがて業者も倒産しどっかにいなくなりました。
多分、代金の回収も出来ずに泣寝入りした人が、何十人もいたはずです。
ですから、悪徳だと思ったら、何よりも対応を急ぐことが第一なのです。
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内職・モニター商法のことを書きながら、つい昔の自分の経験を思い出していました。
内職商法の誘い文句には、妙に人の判断力を麻痺させてしまう魔力があります。
世の中の荒波に揉まれていない素人なら、なおさらです。
しばらく眠っていたこの商法が、さらに手口を巧妙にして、近年復活して来たのです。
消費者生活センターも情報の蓄積や研修により、昔とは大分変わったようです。
しかし、内容証明郵便を作成してくれるわけではありません。
行動は、やっぱり本人が主体的に起すしか方法がないのです。
ひとりで行動するのが不安な人は、行政書士がいつでもサポート致します。
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