内容証明郵便でブレイク !  第16号
               平成16年3月13日発行

             今回の目次
        □ 商行為と支払停止の抗弁
        □ クレジット契約の契約構造



   □ 商行為と支払停止の抗弁

 クレジット会社に対する支払停止の抗弁(抗弁の接続)は、
消費者保護の規定である為、商行為には適用されないとされます。
クーリング・オフの場合も、やっぱりそうです。

 商行為とは、事業者(商人)がその営業に利用する目的で取引する場合とか、
転売利益を目的として商品を購入した場合などをいいます。
 ただし、営利を目的としていても、
個人的労務の範囲内であれば、商行為とされません。
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 さて、商行為に抗弁の接続が認められないことをいいことに、
これを悪用した商法があります。

 いわゆる節電器商法です。
30%以上の節電効果があるを謳い文句に、欠陥商品を買わせるものです。
 クレームが目立ち始めたのは、平成10年頃からで、
年商約50億円もあったアイディックは、昨年とうとう倒産しました。
 その後クレジット会社に対して、損害賠償と未払い代金債務の不存在確認
を求める訴訟が数多く提起されています。
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 この悪徳節電器商法の被害者は、5万から10万はいるとも言われます。
そして、相当数の人は、今もクレジット代金を払い続けているはずです。

 クレジット契約書には、「商行為専用」と明記され、
「割賦販売法の消費者保護の規定の適用はありません」という文言があります。
 契約者は、ほとんどが事業者なのです。
中には、詐欺商法に掛かったことも、全国で訴訟が起されていることも、
知らない人が多いかもしれません。

 残念なことです。これだけの情報化社会になりながら、
まだ本当に情報を必要としている人に届かないということがあるのです。
 クレーム情報に接する機会が多い行政書士や弁護士や司法書士に、
情報発信という面でまだまだ問題があるといわねばなりません。
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 さて、この節電器商法に引っ掛かった事業者は、
商行為ゆえに、クレジット代金の支払を停止することは、
もはや絶対無理なのでしょうか・・・・。

 販売店が倒産している現在、既払い代金の返還はかなり難しいとしても、
未払い代金だけでも拒めるものならと思うのは当然です。
 
 必死にインターネットで調べていたら、遂にいい判決を見つけました。
秋田簡裁で、クレジット会社の未払い代金の請求は、信義則上許されないと判示
しているではないですか。
結局、節電器の売買契約を錯誤により無効とし、
クレジット会社もクレームの状況は知り得たはずとして、支払請求を拒否したのです。

 つまり、商行為であっても、販売店が悪質であれば、
このように支払停止と同じ結果が期待出来るのです。

 事業者も諦めず、権利主張をしてみるべきなのです。


   □ クレジット契約の契約構造

 売買契約が錯誤で無効の場合、クレジット契約の方も当然無効になるのかというと、
先の秋田簡裁の判決でも、そうとは認めていません。
 売買契約とクレジット契約とは、もともと別個の契約だというのです。
もっとも、そうだとしても、消費者の契約では、支払停止の抗弁を主張出来ますから、
クレジット契約も無効として清算処理がなされることになるでしょう。

 しかし、商行為の場合、先のような特段の事情がない限り、
売買契約が無効としても、クレジット代金の請求は拒み得ないことになります。
 しかし、事業者といっても、零細な自営者も含まれます。
これでは、規模の大小に関係なく営業の目的で契約すれば、
商行為となり、悪徳業者にとっては思う壷というべきです。
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 やはり、これは少しおかしいと感じるのは、私だけでしょうか・・・・。
クレジット契約は、売買契約を前提として成立するものです。
では、そもそも抗弁接続の根拠は、何なのでしょう・・・・・。

 有力な学説は、こう主張します。

 『・・・第三者与信型消費者信用取引では、一般に、売買契約と与信契約上において、
各各、与信者による売買代金債務の弁済による消滅と顧客による与信契約上の
債務の発生という二つの効果が一体的に発生するように、約定がなされており、
この「顧客に対する二重の効果帰属の一体的発生」から、
本来、売買契約上、目的物引渡義務と売買代金債務との間に認められる
発生上・履行上の牽連関係が、目的物引渡義務と与信契約上の支払債務との間
にも延長されるものと解されることになる』(千葉恵美子名古屋大教授)
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 表現はとても難しいですが、要するに、
売買契約とクレジット契約は、一体的な契約構造を持つということを言いたいのです。
 この立場からは、抗弁接続規定は消費者の立証責任を軽減する規定であるとし、
商行為であっても、販売店に対する抗弁事由を立証すれば、
抗弁の接続が認められると考えるのです。
 
 私には、この考えが最も理に適っていると思うのですが。


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