内容証明郵便でブレイク !  第21号
               平成16年8月27日発行

             今回の目次
        □ 債務不履行と損害賠償
        □ 物損と慰謝料



   □ 債務不履行と損害賠償

 不法行為と債務不履行の場合に、損害賠償責任が発生します。
不法行為の場合には、交通事故を始め詳細な蓄積があります。
しかし、債務不履行の場合になると、やや実例に乏しいようです。
実際、相談を受けて、損害賠償はどれ位請求出来るのと聞かれても、
ハタと止まってしまいます。

 例えば、アメリカでのインターンシップ研修のプログラムに90万円払い込んで、
渡航日も決まり、ビザの取得待ちのところ、主催会社の不手際でビザが不許可に
なって渡航日を過ぎてしまったというケースの場合・・・・・。

 この場合は、主催者はビザの取得代行を引き受けているので、
善管注意義務違反があったとして、不法行為も成立するでしょう。
 もちろん、委任契約の債務不履行による解除も出来るでしょう。
委任の解除は普通、解約告知といって遡及効がないのですが、
このケースの場合は一般の解除が適用され、
遡及して初めから無効になる場合かもしれません。
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 さて、損害賠償の範囲は、債務不履行と相当因果関係のある範囲とされます。
支払代金は当然の損害として、渡航出来なくなったことによる損害はどこまで請求
出来るかです。相談者は渡航の準備として、会社を退職し、車も売却していました。
 しかし、これらが不意味になったとしても、損害額となるとはっきり決められないのです。
このような場合は、慰謝料として50万円とかを請求するしかないのかもしれません。

 判例にこんなのがありました。
野球の専門学校に入学したところ、学校の説明と大きく違うので、
理事長に債務不履行責任を認め、
入学金・授業料122万円の返還と慰謝料75万円の支払いを命じていました。
 初め慰謝料として150万円請求していましたが、裁判所はその半分を認めたのです。

 このように、債務不履行でもこれくらいの慰謝料が取れるのです。


    □ 物損と慰謝料

 不法行為で物を壊された場合を、物損といいます。
例えば、恋人から贈られた大切なヘルメスのハンドバックをたまたま使用して、
車に轢かれメチャクチャになったという場合。
 原則として、修理代が損害になります。

 では、慰謝料はどうでしょう・・・・・。
慰謝料はまず認められないようです。
精神的損害は修理代相当額の弁償により癒されたと考えるからです。

 ただし、これにも例外があります。
物が特別に精神的な価値を有する場合です。
 例えば、品評会でチャンビョンになった犬とか、血統の競走馬を死なせたという場合
などです。特別な愛着を抱いていた物として、判例は慰謝料を認めています。
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 では、先のヘルメスはどうでしょうか・・・・・。
特別な愛着を抱いていたという点では同じですし、
本人にとっては特別に精神的価値を有する物といえるでしょう。
中古自動車のように代替性がある物と同じには、論じられません。

 私は慰謝料が認められる余地はまだ残されていると考えるのです。
慰謝料は、裁判官の匙加減で決められます。
ですから、いかに精神的価値のある物かを説明する能力に掛かっているのです。

 行政書士も損害賠償や慰謝料については、
大いに研究する必要があるというお話でした。

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