内容証明郵便でブレイク !  第36号
               平成17年11月16日発行             

             今回の目次
        □ 掲示板荒らしと名誉毀損
        □ プロバイダの責任



   □ 掲示板荒らしと名誉毀損
 
 インターネットの最大の特徴のひとつに、低コストがあります。
パソコンを1台買えば、検索エンジンでもメールでもブログでもホームページでも、
通信料+アルファ程度の極めて廉価な費用で済みます。

 投下資本に比べて、そこから享受出来る利益には莫大なものがあります。
その反面、遊び半分で参入して来る人も多くなります。
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 最近の相談に、掲示板で名誉を毀損されかつ営業を妨害されたので、
告訴したいというのがありました。
 掲示板での投稿合戦に乗り過ぎでついうっかり誹謗中傷する記事を載せたりすると、
損害賠償請求の他刑事処罰の対象となりますから要注意です。

 まず発信者に警告して、それでも止めない悪質な場合には、告訴ということになります。
しかし、警察に動いて貰うには、名誉毀損、信用毀損となる事実を、
誰でも分るように提示する必要があります。
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 まず、名誉毀損罪とは、「公然と事実を指摘して人の名誉を毀損すること」です。
名誉とは人の社会的評価のことですが、
必ずしも実際の価値と一致していなくても構いません。

 ただし、名誉毀損になる為には、人が特定の人であること、
つまり氏名とかの個人情報を掲載していたり、
それがなくても他の事情から相手が誰であるか特定出来ることが必要です。

 また指摘する事実は、具体的で社会的評価を低下させるに足るものでなければ
なりませんし、不特定多数の人が認識しうる状態に置くことがないと、
公然にはなりません。もちろん掲示板に記載することは、公然に当たります。
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 例えば、掲示板に「○○楽器店の経営者は、5流だ。携帯電話しか置いてないなんて、
怪しいビデオ店や闇金と変わりないじゃん」などと、投稿したとしましょう。
これは特定の人の社会的評価を毀損しており、名誉毀損罪に当たる可能性があります。

 では、「○○楽器の社長はアホだ、知能は猿並みだ」と記載した場合はどうでしょう。
これは事実の提示というより抽象的な価値判断の提示であり、
名誉感情を毀損していると思われますから、侮辱罪になる可能性があります。
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 名誉毀損罪も侮辱罪も親告罪です。つまり、
被害者からの告訴又は被害者以外の人がする告発がないと、警察は動かないのです。

 一方、信用毀損罪と業務妨害罪の方は、親告罪ではありません。
先の例でいうと、「虚偽の風説を流布して」や「偽計を用いて」に当たると判断されれば、
告訴・告発を待たずとも警察は動かざるを得ないのです。
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 もっとも、名誉毀損罪で告訴しても警察は中々動いてくれないという話は、よく聞きます。
理由としては、告訴の案件が沢山溜まっていること、そして告訴事実が軽微だったり、
犯罪に当たらないケースもあったりして、
起訴まで至る可能性の低いものが結構多いということらしい。

 警察や検察も、重い犯罪から先に動くということなのでしょう。
いずれにしても、告訴状は受理するのが原則であることに変わりありません。
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 さて、掲示板での名誉毀損罪で加害者が匿名という場合、受理されるでしょうか。
匿名でも受理はするようです。

 警察は、まず捜査照会書というものをヤフーなどの掲示板管理者に送付します。
警察の依頼があれば、個人情報を公開しても個人情報保護法違反にはなりません。

 警察から捜査照会があれば、管理者の方でもこれは酷いと思えば、
違法記載を削除するでしょう。
 たとえ起訴にならなくても、告訴により一定の効果はあるのです。


   □ プロバイダの責任

 掲示板での名誉毀損行為は、同時に不法行為の問題でもあります。
侵害記事の発信者に損害賠償請求が出来るのは当然として、
プロバイダにも責任を追及出来ることがあります。

 それは、平成14年5月27日施行のプロバイダ責任法で規定されています。
プロバイダが掲載記事を知っていて放置していたという場合です。

 また被害者はプロバイダに対して、
掲示板投稿者の氏名・住所等の情報公開を請求出来ます。

 ですから、通常であればこのような請求を受けたプロバイダは、
真っ先に違法記載の削除をするはずです。
 プロバイダが不法行為責任を問われるケースというのは、
必要な措置を取らないでクズグズしている場合だからです。

 警察は今ハイテク犯罪の摘発を強化して高い検挙率をキープしています。
つまらない中傷記事をうっかり投稿すれば、民事からも刑事からも責任
を追求されかねません。
 そんな危険な遊びは、心して抑制したいものです。

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