内容証明郵便でブレイク !  第4号
                    平成15年9月13日発行
           
                       今回の目次
                  □ 内容証明郵便の証拠力
                  □ 「行政書士は、代理人になれます」



  □ 内容証明郵便の証拠力
    
  内容証明郵便は、お手紙とあまり変わりないという人がいます。
売掛金の支払いを内容証明郵便で請求しても、無視されればそれまでだし、6ケ月以内に裁判上の
請求をしない限り、時効の中断にもなりません。
  結局、その場合の内容証明郵便とは、相手に心理的プレッシャーを掛けるだけのお手紙だというわ
けです。

  内容証明郵便1発で債権の回収をやってやろうとして、みごとに空振りされると、やっぱり内容証明
郵便は、お手紙だという気持ちになるのも無理はありません。
                     

  でも空振りされる時というのは、こちらにも手落ちがある場合が多いのです。
つまり、契約書を交わしていなかったりとか、納入した商品や制作物が相手の期待とは違っていたと
か、向こうにも払わないそれなりの理由があることが多々あります。

  契約書がない場合、「契約なんかしてないよ」と先方に言われたら、例え訴訟を起したとしても多分
勝てないでしょう。
  また、後者の場合ですと、本来が裁判か調停で解決すべきものでしょう。
                     
  ですから、この場合は債権の回収に失敗するのが当然であって、内容証明郵便が所詮お手紙だか
ら失敗したのではないと思うのです。
                     
  そもそも、内容証明郵便は債権回収の手段そのものではないのです。   いわば、相手に心理的
プレッシャーを加える合法的な仕掛けとして、内容証明郵便が利用されているだけなのです。
                    
  しかし、内容証明郵便の本来の働きは、その証拠力にあります。になってから意外と大きな力を発揮
したりするというものなのです。

  ですから、その意味では、内容証明郵便とは、決して単なるお手紙ではないのです。

  文書には、「確かに受付けました」という証明文が刻印され、〇〇郵便局長入りの日付印のスタンプが
押されます。
  そして、受取人に配達したことを証明する「郵便物配達証明書」が、差出人に後日送られて来ます。
 
  文書にある証明文の刻印と日付印のスタンプ、それに配達証明・・・・これが、内容証明郵便に強い証
拠力を与えるのです。
                     

  さて、内容証明郵便の証拠力とは、一体何なのか?
例えば、クーリング・オフによる契約解除の通知があります。   8日以内とか14日以内に発信すると、
無条件に契約解除が出来るというものです。  内容証明郵便にすると、郵便局がスタンプの日付印で
発信日を証明してくれるのです。  日付印で8日以内か14日以内かが、一目瞭然に立証出来るわけです。

  もし、業者が無視して裁判になったとしましょう。  原告がこの内容証明郵便を証拠として提出すれば、
偽造文書でもない限り、裁判所は証拠として採用してくれて、「契約解除は有効とする」という判決を直ぐに
も下すはずです。

  このように、裁判外においては、「通知した、しない」といった水掛け論を予防し、判ではその強力な証拠
力により判決を左右するのが内容証明郵便なのです。
一般に内容証明郵便を出して無力感を覚えるのは、これ1発で債権回収を図ろうとした時でしょう。
しかし、それはそもそも期待過剰というものです。

  出す側に証拠がきっちり揃っていて、相手が逃げようがない場合なら、内容証明郵便1発が心理的プレッ
シャーとなって、電話や普通の督促では全く埒の明かなかった債権でも、回収出来ることがありますよという
ことなのです。
                     
  先の契約書がない場合なら、相手は逃げようと思えば逃げられます。  契約なんかしてないよ」と突っ撥
ねれば、裁判でもこちらに勝ち目はありません。   このように、請求の前提となるべき証拠がないのに、
内容証明郵便を出すことは、微かな僥倖を期待しているに過ぎません。
 世の中には、例えば消滅時効の期間が過ぎていると知っていても、払ってくるような律義な人がいるには
いますから・・・・・。

  ですから、内容証明郵便が不発に終わる時というのは、内容証明郵便が威力を発揮する環境ではなかっ
たからであって、内容証明郵便が無力だからではないのです。
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 内容証明郵便は請求したという証拠にはなりますが、契約があったことの証拠にはなりません。
契約書とか借用書とか、債権の存在を証明するものがちゃんとあった時に、初めて内容証明郵便1発でも
効果を発揮するのです。

  このように、内容証明郵便の強力な証拠力を有効に活用する為にも、契約書の作成とか、その前提となる
環境整備が重要なのです。


  □ 「行政書士は代理人になれます」
   
  私が内容証明郵便の作成を依頼されたら、差出人名と連名で「作成代理人行政書士田中  明 」と、
記名することにしています。   また、住所と電話番号も書いて置きます。
ただし、電子内容証明郵便を利用しますので、行政書士の職印は押印出来ません。

  ところで、某行政書士A先生発行のメルマガを読んでいたら、内容証明郵便を作成する時、「代理人ではなく、
代書人と記名しています」と、書いてあるではないですか・・・・・。
  A先生がいうには、代理人を名乗れるのはまだ弁護士だけで、行政書士が代理人を名乗ると、弁護士法72条
違反だというのです。
                      
  面白いと思ったのは、A先生のところに弁護士から、「代理人行政書士Aの記名」が入った通知書が、何通か
郵送されて来たそうです。
 A先生にはその通知書を書いた覚えがなく、どうも以前にA先生の相談を受けた依頼者が、勝手に記名して先
方Bさんに送っていたようなのです。

  Bさんは私文書偽造になるかという問題は、今横に置くとしまして、Bさんから相談された弁護士が、A先生と交
渉すべく通知書を送って来たというわけです。

  さて、弁護士は 「代理人行政書士Aの記名」について、何か文句を言って来たのでしょうか・・・・。
メルマガを読む限り、それはなかったようです。
                      
  つまり、私が言いたいのは、もし「行政書士が代理人を名乗ると弁護士法72条違反だ」というのなら、その弁護
士から何らかの告知があるはずではないかということです。  一番利害関係があるのは、弁護士だからです。

  しかし、弁護士は少しもそれに言及せず、A先生を代理人として考えているようである・・・・・。  弁護士でさえ、
代理人行政書士Aの記名」について、おかしいとは思っていないのです。
 
 そうです。
弁護士が、行政書士法の改正による代理権の付与を知らないわけがありません。  「代理人行政書士Aの記
名」
は、行政書士法第1条の3第1項第第2号から、当然認められることなのです。
                     
  行政書士の独占業務に許認可申請がありますが、行政書士の申請代理権については、同法同条の3同項第1号
で認められています。

 例えば、建設業許可申請書様式を見ると、
申請者の下に「代理人 氏名 行政書士〇〇   職印
                住所  
              電話番号   」という記入欄が、設けられています。
  しかも、印鑑については、本人は不要で、代理人の印鑑だけでいいのです。

  内容証明郵便の作成代理と、許認可申請の申請代理との違いといえば、民か民官かだけです。
代理人になれることについて、差異はないはずです。

  ただし、内容証明郵便の場合、本人の印鑑が必要で、代理人の印鑑で済ませることは出来ません。
もっとも、電子内容証明郵便なら、印鑑は全く不要です。
                      
 よく、「行政書士は交渉が出来ない」と言う人がいます。  しかし、これも少し変です。
私の立場では、本当に出来ないのは法的紛争事件の交渉だけです。   行政書士の代理権の解釈には、消極説と
積極説があることは、本メルマガ第2号にも書きました。

  ですから、今日は深入りしませんが、要するに積極説に立つと、法的紛争事件でない限り、本人の委任により交渉が
出来るのです。   どちらが通説かまだ分からないのに、「行政書士は交渉が出来ない」などと断言する必要は毛頭ない、
と考える次第です。
  もっとも、内容証明郵便の内容が債権回収の場合、代理人として債権の取立てまで出来るかといったら、それは無理
でしょう。
  取立ての主体は本人であって、行政書士はそれを法的に支援するに留まると私は考えています。
 

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