内容証明郵便でブレイク !  第5号
               平成15年10月4日発行

             今回の目次
        □ 内容証明郵便と事件性
        □ 法務支援サービス



  □ 内容証明郵便と事件性

 内容証明郵便は事実証明に関する書類であるから、
行政書士は当然に業務として作成出来ると考えるのが一般的です。
 さて、最近実際に内容証明郵便を作成していて思ったのですが、
事件性がある事案でも本当に作成して構わないのだろうかということです。

 依頼を受けた事案というのは、売掛債権の回収ですが、
どうも相手方は「そんな契約はしてない」と主張しているようなのです。
 取り敢えず相手の反応を見たいということで、内容証明郵便を送付しました。
相手から直ぐ連絡があり、やっぱり「契約してない」の一点張りなのです。
 結局、契約書を作っていませんでしたので、法的手段は取らず、
納品した制作物(ホームページの改定)を引上げること、
つまり改定前に戻すという対抗手段を取ることで決着しました。
                    ж

 これなどは、契約した、しないで主張が対立している事案ですから、
法的紛争事件=争訟性のある事件と解される余地があります。

 としても、本件の内容証明郵便の作成が、
弁護士法72条に違反すると考える行政書士は今ではいないと思います。
 なぜかというと、行政書士は事件性があるなしに拘わらず、
内容証明郵便の作成は出来るという考えが定着しているからです。
 私自身も今まで疑問に思ったことはありません。
                    ж
 しかし、少し前までは、内容証明郵便の作成も、弁護士と協力してやる
のでなければ、弁護士法違反とされた時代があったようです。

 私は何を言いたいのかといいいますと、
法律がそのままでも法律で制限される範囲というのは、
時代と共に変わって行くものなのだということです。
 そして、事件性のある法律事務が弁護士法72条の法律事務だという解釈も、
今では本当に説得力があるだろうかということです。
                    ж
 そもそも、事件性という概念がけっこう曖昧なのであって、
刑罰法規の解釈に適用することはやっぱりおかしいという気が私もします。

 一番すっきりする解釈は、弁護士法が一般法であり、
行政書士法その他の士業法は特別法だとするものです。
 これですと、「特別法が一般法に優先する」により、
それぞれの業法に基づき他の士業者も法律事務が出来るわけです。

 この考え方は前からありますが、最近特に行政当局の担当者から
しばしば聞かれるようになりました。
 例えば、登記事務は法律事務であるのに、司法書士の業務とされるのは、
司法書士法という特別法で規定されているからだと説明するのがそれです。

 この立場で行くと、業法に規定されている法律事務は、
事件性の有無に関係なく業務として出来ることになります。
                    ж
 そこで、行政書士法を見てみますと、
行政書士は官公署に提出する書類を作成し、提出手続も代理出来るとされています。
 官公署には、裁判所や法務局が含まれます。

 そうすると、訴状、特定調停申立書、自己破産申立書、法人登記申請書
といった書類も、作成出来ると考えないと一貫しません。
 行政書士は裁判関係の書類を作成出来ないというのが現在の通説ですから、
業務の範囲がこれで一気に広がることになります。
                     ж

 今、弁護士法72条の見直しが進められています。
先日、司法制度改革推進本部の法曹検討会(座長伊藤眞東大教授)の
議事録を見ていて、びっくりしました。 

 弁護士法72条但書の
「この法律に別段の定めがある場合はこの限りではない」
を、
「この法律及び他の法律に別段の定めがある場合はこの限りではない」、
と改正する案
が提出され、議論されているではないですか・・・・・・。
       ↓ (法曹制度検討会第5回議事録 平成14年6月18日)
 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sihou/kentoukai/seido/dai5/5gijiroku.html

 これは、行政書士法を弁護士法の特別法と明確に位置付ける趣旨の案です。
結局、日弁連から予測可能性が確保されていないという意見が出て、
今国会には上程されなかったようです。
                     ж

 これからどのような修正案が出て来るのか見ものです。
行政書士法を特別法と位置付ける流れは、変わらないでしょう。

 話は変わりますが、もう現場では福岡地裁のように、
行政書士が作成した自己破産申立書を受理する裁判所も現れています。
 こおいう実態も踏まえて、是非この機会に裁判所・法務局関係の書類に関し、
限定的にでも行政書士の業務として解禁して欲しいものだと思うのは、
私だけでしょうか・・・・・。


   □ 法務支援サービス

 昨年7月から相談業務が、行政書士の法定業務とされています。
ただし、その範囲は、行政書士が作成出来る書類に関する相談に限られています。
 しかし、この相談も先に述べたように業務の範囲が不明確かつ流動的である為、
どこまで出来るのかではっきりしない部分が出で来るのです。

 事例で述べると、先日ある相談がありました。
 自転車操業に陥っている多重債務者で、
イッチモサッチモ行かなくなって、サラ金に騙され1本化しようとしていましたが、
段々不安になって来てメールで相談して来たわけです。
 これなどは、契約の相談であると同時に、債務整理の相談でもあるわけです。

 結局、私はサラ金との契約破棄を手紙で通知するようアドバイスをし、
債務整理の方は特定調停その他利用できる制度の選択肢を説明しました。
 手紙の方は事実証明の文書ですから問題ないとして、
特定調停の方のサポートは情報提供だけですが、
、その相談は法定外業務ということになるでしょう。
                    ж

 では、行政書士は法定外業務を、業務として出来ないのでしょうか・・・・。

 私は従来から、法定外業務については、他の法律で禁止されていない限り、
憲法22条の営業の自由により、委任があれば出来るのだという立場を取っています。
 ですから、裁判所関係の情報提供についても、
本人の委任があれば可能な法務支援サービスなのだとは思っているのですが・・・。
                    ж

 しかし、これを考え始めると、何時もすっきりしないものが残ります・・・・・。
 結局、弁護士法72条が現状と合わなくなっているのです。
司法書士法、弁理士法、行政書士法、社労士法といった業法を作って、
これら士業者にも部分的に法律事務を認めているのに、
弁護士法72条本体を従前のまま放置して来て、
つまらない解釈問題でいつまでも混乱させているとは、
行政当局の怠惰以外の何者でもありません。
                    ж

 弁護士法72条のそもそもの目的は、
事件屋や示談屋といった三百代言が跋扈して、
公平な社会正義の実現が妨げられるのを、阻止するに
あります。
 
 他の士業者は、それぞれの業法によって厳しく律せられ、
しっかりした倫理観を備えたプロフェッショナルです。
 もはや、先のあんな弊害を心配するような状況ではないと思います。

 市民が今一番望んでいるのは、気軽に何でも相談できる
アットホームな法律家です。
 法的サービスの充実は、時代の要請なのですから、
この機会に是非行政書士の業務範囲も
市民にとって使勝手がいい方向で明確にして欲しいと願う昨今です。

     ※ ご感想・ご意見をお寄せ下さい。
           メールアドレス::redume@jcom.home.ne.jp





         発行者 : 行政書士 田中 明 事務所
    〒239-0822  神奈川県横須賀市浦賀町5丁目50番地211    
                   TEL・FAX   046-843-6976
 マガジン説明用Webページ : http://lantana.parfe.jp/break1.html
     ホームページ・トップ :  http://lantana.parfe.jp/ 
-------------------------------------------------------------------
  このメールマガジンは、『まぐまぐ』 http://www.mag2.com/ を利用して発行
 しています。解除は http://www.mag2.com/m/0000110319.htm からできます。
-------------------------------------------------------------------