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  行政書士の代理権で出来る範囲

   平成14年7月1日(改正行政書士法の施行)から、行政書士は他人の依頼を受け報酬を得て代理事務を
業として行うことが出来ます(行政書士法第1条の3)。 

 これは50年来の念願が叶った画期的な改正です。  
これまでは書類を本人に代行して作成し提出するにとどまりました。   申請はあくまで本人の申請です
から、行政書士が役所の窓口で訂正を求められた場合には本人の訂正印を貰いに一度帰らねばなり
ませんでした。 
 提出手続の代理権が行政書士に付与されたことで、窓口で行政書士が訂正しても
よくなったのです。    
                             
  また、委任状があれば申請代理(代理人として申請に関する意思表示をする)も出来ます。
                            
  次に、契約その他に関する書類代理人として作成することが出来ます。   
代理権は本人に代わって本人の為に法律行為をする民法上の権限です。
                          
  従って、行政書士は契約書の作成代理のみならず、本人の委任(委任状)を得て相手方と契約内容
について
協議
したり契約を締結することも出来ます。

  つまり、行政書士は契約書を単に作成代行する使者的地位から本人の代理人として契約をまとめる
権限
を有する主体性のある地位を獲得したのです。     
                             
  それに伴い代理人としての責任(善管注意義務、権限外の行為をしない義務、報告義務等)を負う
ことはいうまでもありません。 

  しかし、事案が「事件」というに相応しい程度に争いが成熟した場合には、弁護士の扱うべき弁護士
法72条の「法律事件」(法的紛争事件=争訟性のある事件)
とされ、行政書士が代理事務を行うことは
出来ません。

 例えば、内容証明郵便作成業務について云えば、当事者で合意した示談金を相手方に請求することは、
行政士法第1条の2第1項で定める権利義務又は事実証明に関する書類の作成に該当しますが、
まだ示談が成立していないのに行政書士が金額を決めて請求することは弁護士法に定める鑑定に該当する
ことになりますから、行うことは出来ません。
        参考 →非弁とされない為の予防策   非弁の要件を勉強して非弁を回避せよ!
       

 [ コーヒーブレイク ]    [時間的余裕のある方のみお読み下さい]   

<余談になりますが>         

 行政書士の代理権を狭く解釈して、行政書士は契約締結や示談交渉まで出来ないという人がいます。  
弁護士法72条の解釈との絡みもあって積極説、消極説が入り乱れています。

 消極説の人は、文理解釈をして書類の作成代理にとどまるといいます。 
しかし、条文には「代理人として」と明記されているのです。  民法でいう代理権そのものが当然に予定
され
ていると考えるのが当然ではないでしょうか。
                            
 そこで積極説の人は、委任状を貰えば民法の代理権の権限により契約締結も当然に出来ると考える
のです。   その根拠、憲法22条の職業選択の自由(営業の自由)にあります。    
 衆議院法制局の某担当者も「作成代理でなく契約代理であるといい、現行法上、争訟性のない契約等の
代理は弁護士や行政書士でなくても誰でも出来る
」と述べています。 
この説明こそまさしく積極説そのものだと思われます。
                         
 さて、弁護士法72条の解釈との絡みの問題です。  私は法務省と同じ「法律事務」を法的紛争事件と
解釈する立場
です。  つまり、法的紛争事件にまで至っていなければ行政書士も業務として出来る(報酬
を請求出来る)と考えます。

  しかし、これにも考えが色々あります。   日弁連は未だに「事件性不要説」の立場に立っています。   
かと思えば、法的紛争事件でも行政書士は正当な業務行為として出来るのだと云う学者もいます。   
 つまり、裁判所や法務局も「官公署」なのだから、これらに提出する書類の代行作成も出来る筈だというの
です。   事件性という概念がそもそも曖昧であり、罰則のある規定の解釈にこんな曖昧な概念を持ち込
むこと自体が罪刑法定主義の精神に反するとしてこう主張するのです。
                           
 実に意見が錯綜しています。   こんな神学論争のような議論が起こる最大の理由は、弁護士法72条が
現状との間で齟齬
を来たしているからだと思います。   弁護士を取り巻く環境が大きく変貌したのです。  
弁護士以外の法律専門職
がいつのまにか実力をつけその専門分野で弁護士を凌駕している部分もある
といわれます。

 
そもそも、弁護士法第72条の目的は、事件屋や示談屋といった三百代言が跋扈して公平な社会正義
の実現が妨げられるのを阻止
するにあります。    しかし、隣接法律専門職種の人達はそれぞれの士
業法で厳しく律せられ、プロフェッショナルとしての倫理観を備えた法律家
です。   
 近時になって日弁連、隣接法律専門職種との調整は極めて困難だと認めるようになりました。
                        
  今ここに弁護士法第73条に関する最高裁判決(平成14年1月22日があります。
<事案>  
 ゴルフ会員権仲介業者・販売業者が業として預託金据え置き期間経過後のゴルフ会員権を買取り、預託金
返還請求の訴訟を提起したのは、弁護士法73条に違反するか。   
  弁護士法第73条の趣旨 →弁護士でない者が業として他人の権利を買受て実行するのを禁止。

<判決要旨>  
 みだりに争いを誘発・助長する恐れがなく、社会的経済的に正当な業務の範囲内にあると認められ
る場合であれば、弁護士73条に違反せず
、上記 行為は許される。→ 判決の詳細
                         
 上記判例は弁護士第73条に関するものですが、弁護士第72条の解釈にあたりキーとなる判例とされて
います。   としても、社会的経済的に正当な業務の範囲内かどうかということは判例が出て見ないと分
からないところがあります。  
 その意味では今もってグレーゾーンであるというのが真実なのかもしれません。      

  現行法のままですと、行政書士その他の隣接法律専門職種の職域の問題(どこまでが業務範囲なの
か?)がいつまでも解消しません

         

                          最新更新日 平成31年8月21日


                  行政書士田中 明事務所