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< エッセー> 生前相続について
親が子供や配偶者に何か財産を生前贈与するということはこれまでほとんどなか
ったのではないでしょうか。 その理由の第一は贈与がメチャクチャ高いからです。
贈与税の場合、基礎控除額が110万円です。 つまり、110万円を超えると控除後の
課税価格に対して10%掛かります。 しかも、税率は段階的に上がって行きます。
例えば3000万の預金なら、税率は60%で税額控除が390万円あったとしても、 結局、
1344万円の贈与税が掛かります。 こんなに払うくらいなら死後の相続でいいと誰も
が思うでしょう。
その結果、親の資産が凍結されてしまい中々動かないという状況になっていたわけ
です。 日本の1200兆円という金融資産の8割は、60代〜80代の親達が保有してい
ます。 そして、この資産が動かないことが消費の低迷とも関係があるのです。
ここにメスを入れた税制改革が平成15年度から実施されました。 正式には相続
時清算課税制度といいますが、要するに生前相続の道が開けたのです。
実質は生前贈与なのですが、非課税の範囲が相続にかなり近くなるという意味では、
生前相続というべきものです。
具体的にいうと、65歳以上の親から20歳以上の子に生前贈与されることを前提
として、基礎控除額2500万円(累計額)を超えない限り非課税とするというものです。
また、2500万円を超えた場合でも超過額に対して一律20%の課税となります。
ただし、親が死にその子が相続する際、相続財産と生前贈与分の合計額に対して相
続税が掛かります。 結局、節税効果はないにしても前倒しの相続が可能になるのです。
この税制改正は親子関係を良好なものにすると言われます。 つまり、30代、40代
は、教育費や住宅ローンの負担が重く圧し掛かっている世代です。 そんな世代のどこ
に、生前贈与を歓迎しない者がいるでしょうか。 介護してくれている息子の嫁を養子に
して生前贈与することも出来ます。 これまで、遺言書によってしか出来なかったことが、
親のまだ元気な内に可能となったのです。
行政書士田中 明事務所