職人型内容証明仕掛人の方法論 ! 第100号
平成24年8月10日発行
職人型内容証明仕掛人が一発解決目差す合法的仕掛け作りのノウハウ。
今回の目次
□ 悪徳ホームページリース商法に関する画期的判決
大阪地裁平成24年5月16日判決は、リース会社が販売店に対し負っている信義則上
の注意義務に違反があったとして、契約者は販売店に対する抗弁をリース会社に対抗
出来るとした画期的な判決です。 →判決全文
当事務所に相談があった同商法の案件で裁判になったものが2件ほどありますが、
何れも裁判官の態度にリース会社の注意義務違反を認定してくれる様子などさらさら
なくリース会社側に有利な条件での和解で終わっていました。
そんな時に上記判決を知って、驚くと同時に何故にこれまでの裁判官はこのような
判断をしなかったのかと思った次第です。
今日は上記判決の「裁判所の判断」からポイントを整理して書き出して見ます。
なお、裁判は被害者である零細事業者が原告となり被告のリース会社に対しリース
契約の無効確認を求めたものです。
1 主な事実認定
・ サプライヤーによる役務の提供そのものをリース契約の対象とすることを予定し
ていない。
・ リース物件価格の相当性を審査することは予定されていない。 ユーザーが
物件借受証を発行する手続きは行われなかった。
・ リース会社の担当者は販売店で本件ソフトの現物を見たことがない。
・ 販売店から本件ソフトの引渡しを受け、あるいは自ら本件ソフトを使用した事実は
ない。
・ 総合すると、ホームページ作成の役務の提供を約する一方で、その代金の支払
方法として被告のリースを利用するに際し、名目上のリース物件として本件ソフト
を記載したに過ぎず、オリジナルソフトなるものは実在しないと考えるのが相
当である。
2 当事者の主張に対する判断
・ リース会社と販売店を単純に一体と見ることは出来ない。 本件各契約の
不成立あるいは無効を当然に導くものではない。
・ 役務の提供、完成後のホームページを引渡すことが本件各契約の内容となる
ものではなく、債務不履行解除をすることはできない。
・ 原告に本件ソフトを取得し使用する意思はない。 役務の提供がリース契約
の対象にならないとの知識は一般的とはいえず、過失があったとはいえない。
・ 本件各ソフトについて、権利者である訴外E社から被告に使用権を設定し、被告
から原告らに使用権の再設定をすることになるのであり、被告においても、ソフト
ウェアのリースでは、役務の提供が混入してくる可能性のあることを認識して
いるのであるから、原告らに確認する際にも、それに対応した発問をすべき
である。
・ 訴外E社が役務の提供を行う趣旨で顧客にリース契約を締結させることを疑
わせる事実が存するときは、この点を確認し、不適切なリース契約を締結し
ないこととする信義則上の義務を、顧客に対し負っているというべきである。
・ 訴外E社が真実は役務の提供を目的としつつ、名目上本件ソフトを対象とする
リース契約を利用しようとするものであることを、若干の注意を払えば了解可能
であったのに、適切に調査確認せず、本件各契約を含む多数のリース契約を
締結したことになるのであって、信義則上の注意義務違反が認められる。
・ 本件の事実関係を前提とすると、原告らは、役務の提供がないことを理由
とする訴外Eに対する抗弁を、信義則上、被告に対しても主張出来ると解
するのが相当である。
・ 被告に既払リース料の返還義務はないが、原告も未払のリース料を被告に
支払う必要がない。
上記判決で裁判所は、リース会社が適切な注意義務を尽くしておれば不適切な
リース契約であると分かって締結しなかった筈だと認定し、契約者はそのような
リース会社に販売店に対する抗弁を信義則上対抗出来るとしたのです。
クレジット契約のケースですが、最高裁平成2年2月20日判決で、支払い停止の
抗弁の適用がない場合でも、「信義則上相当とする特段の事情」がある場合に
購入者はクレジット会社に抗弁が出来るとされていました。
この判例理論を支払い停止の抗弁を規定する特別法が整備されていない
リース契約においても、当て嵌まることを初めて示した判決だったのです。
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