職人型内容証明仕掛人の方法論 !  第128号
                     平成27年12月23日発行
      職人型内容証明仕掛人が一発解決目差す合法的仕掛け作りのノウハウ。

                          今回の目次
                       □ 二つのやや特異な判決



1 「もらい事故」に関する平成27年4月13日福井地裁判決

   自動車損害賠償保障法(自賠法)3条では、自動車を運転して他人の生命と身体を害した場合、
 自動車の所有者などの「運行供用者」は、以下の3つの全てを立証しない限り損害賠償責任を負う
 としています。

    イ 注意を怠らなかった

    ロ 第三者に故意又は過失があった

    ハ 自動車に欠陥があった

   本事案はセンターラインを越えて走行していた車(Aの知人が運転)の助手席に乗っていたA(車の
 所有者)が対向車(運行供用者B)との衝突事故で死亡したという事故で、判決ではBにAに対する
 4000万円の損害賠償を命じていました。

  普通なら、センターラインを越えて走行していたA側の方に責任があると考えるのではないで
 しょうか。

   しかし、裁判所はA側の過失を認めつつ、B側についても「前方不注意の過失がなかったとはいえ
 ない」として、注意を怠らなかったことの証明が尽くされていないとして責任を認めたのです。
   結局、過失相殺の結果、B側が4000万円の損害賠償金を負担することになったのです。

   B側が責任を免れるのは、はみ出して走行してくる自動車にB側が気付いた位置が特定されて、
 その時点でブレーキを掛けたりクラクションを鳴らしたとしても衝突を回避することは到底不 
 可能であったことをB側が立証出来た場合に限られるということです。


   A が加入していた自動車任意保険では、家族以外の者が起こした事故には適用されない内容
 でした。  そこで、Aの遺族がBに対し損害賠償訴訟を提起したのです。

   「もらい事故」は誰でもあり得る事故です。

   その対策としては、自動車保険契約を「もらい事故」にも適用される内容にして置けばいいので
 はと考えられます。



2 認知症徘徊鉄道事故に関する名古屋高裁平成27年4月24日判決

   9 1歳の認知症Aさんが徘徊中に、JR東海の電車にはねられ死亡した事案で、判決はAさんの
 遺族にJR東海に対し振り替え輸送代など359万円の損害賠償を命じました。

   Aさんは要介護4で、要介護1の妻と二人暮らしで長男の妻Bさんが近くに住んで在宅看護をして
 いましたが、Bさんがまどろんだ隙にAさんは独りで家を出て事故に遭ったのです。

    裁判所は「民間のホームヘルパーを依頼するなど、在宅介護に支障がないよう対策を取るべき
 だった」「同居の妻は監督義務者の地位にあり、行動把握の必要があった」と判断し、Bさんに責任
 を認めたのです。

   介護付有料老人ホームなどでは、入居者が勝手に外出しないよう玄関横に事務所を設置して
 24時間監視しています。

   しかし、一般家庭での24時間監視は難しい面があります。 

   認知症の老人が徘徊するのを見付けたら直ぐ保護出来るような、地域全体での見守り体制が
 要請されているのです。


 
 なお、同判決を原審とする上告審では、Bさんの責任を否定しJR東海の逆転敗訴が確定
しました(最高裁第三小法廷平成28年3月1日判決)。  → 
判決全文

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