職人型内容証明仕掛人の方法論 !  第130号
                     平成28年3月18日発行
      職人型内容証明仕掛人が一発解決目差す合法的仕掛け作りのノウハウ。

                      今回の目次
            □ 
徘徊老人の事故と妻の損害賠償責任




  認知症のAが妻Bに知られずに徘徊しJR東海の電車に引かれて死亡した際に生じた
列車の遅れなどの損害を、JR東海はBに賠償請求していましたが、

最高裁はBに損害賠償責任はないとの判断を示しました(平成28年3月1日最高裁第三
小法廷判決)。

  A は認知症が進行した責任無能力者の為、同居の妻Bが法定の監督義務者(民法714
条1項)に当たるのかが争点になりました、

  判決ではまず、成年後見人の身上配慮義務(成年被後見人の心身の状態及び生活の
状況に配慮する義務)について解釈を述べています。

 この義務は「契約等の法律行為を行う際に成年被後見人の身上について配慮すること
を求めるもので、

事実行為として成年被後見人の現実の介護を行うことや成年被後見人の行動を監督
することを求めるものと解することは出来ない」としました。

  次に、夫婦の相互扶助義務(民法第752条)についても「第三者との関係で相手方を監督
する義務を基礎付けることは出来ない」とし、

「精神障害者と同居する配偶者であるからといって、その者が民法714条1項の法定
の監督義務者に当たるとすることは出来ないというべきである」
としました。


  ただし、「法定の監督義務者に当たらない場合であっても、
責任無能力者との身分関係や日常生活における接触状況に照らし、第三者に対
する加害行為の防止に向けてその者が当該無能力者の監督を現に行いその態
様が単なる事実上の監督を超えているなど
その監督義務を引き受けたとみるべき
特段の事情が認められる場合には、

衡平の見地から法定の監督義務を負う者と同視してその者に対し民法714条に基づく
損害賠償責任を問うことができるとするのが相当であり、


このような者については、法定の監督義務者に準ずべき者として、同条1項が類推適用
されると解すべきである」と判示しています。

  このような考えに基づき、妻Bは「Aの第三者に対する加害行為を防止するためにAを
監督することが現実的に可能な状況にあったということはできず、その監督義務を引き受
けていたとみるべき特段の事情があったとはいえない」としたのです。


  この判決は、家族が賠償責任を負うのは特段の事情がある場合に限られるとし、この
特段の事情は介護の実態を総合考慮して判断されるべきであるという初判断を示した
ものです。

  さて、この判決には伏線があります。

  民法第714条の親等の監督責任に関し、昨年に次のような初判断を示していました。

「通常は人身に危険が及ぶものとみられない行為によってたまたま人身に損害を生じさ
せた場合、当該行為について具体的に予見可能であるなど特別の事情が認められない
限り、子に対する監督義務を尽くしていなかったとすべきではない」
(平成27年4月9日最高裁第一小法廷判決)   →判決全文


  なお、このケースで親に責任が認められ場合であっても、

自動車の任意保険に加入していれば、「自動車事故以外の日常生活での事故」
つまり本人又は家族が過失により他人に損害を与えた場合(法律上の損害賠償責任が
発生した場合)に係る個人賠償責任特約に基づき賠償金を保険会社が全額負担して
くれます。

  民法714条は被害者救済の規定であったことからこれまで無過失責任に近かったの
ですが、近時の判例変更により家族の責任が軽減された分、被害者の救済が問題に
なりますがそれは保険でカバーすることになりそうです。


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