保証人の破産手続参加と求償債権の時効


                職人型内容証明仕掛人の方法論 !  第135号
                     平成28年10月14日発行
           職人型内容証明仕掛人が一発解決目差す合法的仕掛け作りのノウハウ。

                       今回の目次
           □ 
保証人の破産手続参加と求償債権の時効


  中小企業が銀行から融資を受ける際、信用保証協会の保証が付くことが多くあります。
中小企業が破産すると信用保証協会は銀行に代位弁済をして求償権を取得しますが、この求償債権の
消滅時効に関し下級審判決では民法第174条の2第1項により破産手続終了後から10年に延長されると
するのが殆どでした。

  しかし、最高裁平成7年3月23日判決は求償債権の消滅時効を5年とする初判断を示しました
        →判決全文
 
最高裁平成9年9月9日判決でも5年とする判断が示され、判例法として確定しています。

  さて、信用保証協会など保証人(以後保証人という)の破産手続参加の実務とはどのようなものなので
しょうか。

  破産手続とは、簡単に云いますと破産債権を届出た破産債権者に対し破産債権の確定後に債権額
に応じて配当することです。

  主債務者が裁判所に破産宣告の申立をすると、裁判所から通知が届いた債権者は破産債権の届出を
することになります。  破産債権調査期日において破産管財人が異議を述べないと破産債権が確定して
債権表に記載されます。

  ところで、債権者が破産債権の届出を提出している場合(これが通常と思います)、債権の二重届を防止
する見地から保証人は求償債権を破産債権として届出することが出来ません。
  
  その代わり、破産債権の確定後(つまり破産債権調査期日後)に保証人は破産債権の全額を代位弁済す
れば破産裁判所に対し破産債権につき地位承継による名義変更の届出を行うことが出来、届出をすればそ
の旨が債権表に記載されることになります。

  結局、保証人は主債務者の連帯保証人から債権の回収を図ることになりますが、破産手続終了から5年
が経過してしまうと最高裁平成7年3月23日判決に基づき連帯保証人から消滅時効の援用を主張されることに
なります。

  最高裁平成7年3月23日判決が求償債権の消滅時効を5年とした理由は、「求償権の行使として届出債権
の名義変更の申出をしても、右求償権の存在及び内容についてはこれを確定すべき手続がとられてい
ると
みることができない」というものです。


  民法第500条の法定代位の法的性質をめぐては幾つかの説が対立していた時期がありましたが、
今では債権移転説が通説・判例です。

  即ち、求償権と原債権は別個独立の権利であり、代位弁済によって原債権は消滅せず求償権と併存する
が、原債権及びその担保権は求償権の確保することを目的として存在する附従的性質を有すると考えるの
です。

  この法理論の下で求償債権の時効延長効に関し下級審の判断は殆どが10年としていましたが、
最高裁平成7年3月23日判決は5年とする新判断を示して決着を付けたのです。

   参考資料 →七戸克彦「弁済者代位における原債権・求償権の時効中断効・延長効


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