職人型内容証明仕掛人の方法論 !  第140号
                     平成29年9月6日発行
           職人型内容証明仕掛人が一発解決目差す合法的仕掛け作りのノウハウ。

                       今回の目次
              □ 
リスクを増大させる商事売買のカード決済



 
今やカード決済の時代です。  
クレジット取引の現況はここ10年で大きく様変わりしました。

クレジット取引には消費者金融と販売信用(クレジットによる購入)があり、全体で75兆円の市場規模
があります。

ここ10年で見ると平成28年の消費者金融の貸付残高が4兆円で四分の一に激減したのに対して、
クレジットカードショッピングの信用供与額は53兆円で2倍以上になっています。

 つまり、クレジット取引の内の70%がクレジットカード決済なのです。


  さて、訪問販売では少し前まで取引の度に個別クレジット契約書を作成する個別クレジット契約が
主流でしたが、それが10年で半減して4.5兆円しかありません。 訪問販売でもクレジットカード決済が
浸透しているのです。

  カード決済の場合、クレジットカード発行時にクレジット会社の審査が済んでいる為審査が不要な上
スマホで簡単に決済が出来るので、訪問業者と顧客の双方に大変利便性があります。 


  しかし、この便利さにリスクが潜んでいるのです。

  まず、カード決済のクーリングオフは認められていません。   販売契約をクーリングオフしてそれを
支払停止の抗弁事由とする旨クレジットカード会社に通知する必要があります。


  厄介なのは商事売買(事業者の契約)の場合です。

事業の為若しくは事業としての契約には割賦販売法の適用がなく、クーリングオフや支払停止の抗弁が
出来ません。  つまり、消費者保護規定から全く蚊帳の外にあるのが商事売買なのです。

  商法では契約締結時に買主に検査・通知義務を課しているのも、買主に不測のリスクを負担させない
ようにする趣旨と考えられます。

  ところで最近、零細中小事業者がホームページ制作やSEO対策等の制作物供給契約を訪問販売業者
と締結して、締結と同時にカード決済させられているケースが目立ちます。

  しかし、これでは完成品の検査もせずに支払いを先にしたのと同じことになり、商法で買主に検査・通知
義務を課したことを無意味にしてしまう恐れがあります。


  売主に完成義務のある制作物供給契約では、制作物の完成・引渡義務と買主の報酬支払義務が同時
履行の関係にあり、報酬の支払いは引渡と同時にする後払いが原則なのです(民法第633条)。

  更に、商事売買の場合には買主が検査・通知義務を怠ると売主に瑕疵担保責任を追及出来なくなります。


 買主が目的物を受取った時は遅滞なくこれを検査し、目的物に瑕疵又は数量不足があることを
 発見した時は売主に対してその通知をなすべく、また目的物に直ちに発見出来ない瑕疵がある時
 は六ケ月以内にこれを発見して売主に通知すべく、これを怠る時は、買主が目的物の瑕疵又は数
 量不足を理由に売主に対して責任を追及することが出来ない」 
(商法第526条第1項)


 尤も、検査・通知義務は任意規定ですから買主は自らの意思で適用を排除することも可能です。  
しかし、中小事業者の多くは検査・通知義務を排除するという認識もないままカード決済させられているのが
実際ではないかと思います。


  そもそも、商事売買では支払停止の抗弁が出来ないので、制作物が完成・納品前に販売店が破産すれば
カード決済したクレジット代金は買主の損害となりますし、破産まで行かなくても制作物が不完全であったり、
何時までも修復しないなど債務不履行を理由に制作物供給契約を解除したとしてもカード決済したクレジット
代金をクレジット会社に返還請求することは出来ません。

  ですから、買主は制作物の納品があってから検査し不完全なところがあれば修復を依頼して完全に直ったと
認識した後にカード決済するというのが筋なのです。

  訪問販売業者は契約と同時にカード決済すると代金を割引にしますとか云って勧誘しています。
50万、100万の大金をポンと支払える中小事業者はそういませんから、つい業者の勧誘に乗ってしまうのです。


  今では消費者が本来の対象であったクレジット取引が何時の間にか消費者保護規定の適用対象外の中小
事業者にまで拡大して、悪質訪問業者の餌食にされています。

  私の見解を云えば、商事売買ではカード決済を原則禁止して個別クレジット契約書を作成すべきと考えます。

  といいますのも、カード決済では、クレジット会社はどんな内容の契約なのか詳細が全く分からないのです。
しかも割賦販売法が適用されない為、加盟店についての調査監督義務が法律上なく、信義則上あるとされて
いるに留まります。

  消費者の個別クレジット契約ならば、クレジット会社には販売店に不実の告知や不退去など違法行為がなか
ったかについて契約時に調査義務があり、個別クレジット契約書にはその調査結果を記載する必要があります。

  しかし、商事売買のカード決済では、そんな調査など一切ないので、悪徳訪問業者にとってこんなやり易い
商売もないのです。
 
  悪徳訪問業者の中には在庫を処分してしまうと夜逃げのようにさっさと行方をくらます者がいます。
その時全リスクを被せられるのはクレジット会社ではなく中小事業者なのです。


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