職人型内容証明仕掛人の方法論 ! 第145号
平成30年4月5日発行
職人型内容証明仕掛人が一発解決目差す合法的仕掛け作りのノウハウ。
今回の目次
□ レンタルオーナー商法との闘い方
最近、レンタルオーナーという妙な契約に関する相談が、消費生活センターに2012年以降年数百
件もあると云います。
しかし、注意喚起をするだけで、判例がまだないこともあって実際の被害者救済の方法については
全く触れられていません。
最近、当事務所にもレンタルオーナーに関する相談がボチボチ来るようになりました。
2年経過した頃からレンタル料の支払いがストップして、クレジットの残債180万円だけが残ったという
ものです。
<事例>
イ 会社員のCはファミレスでAからトライクレンタル事業への参加を勧誘される。 中古トライク
(232万円)をAの紹介する専門店Bと販売契約を締結してオーナーになる。
同時にレンタル代理店とトライクの賃貸借契約を締結するので、トライクは直接引渡 されず
代理店を経てリゾートホテル等にレンタルされる。
トライク購入代金の支払いはクレジットにする(毎月3万円の84回の分割)。
ロ トライクのオーナーにはAから毎月のクレジット分割金+232万円の1%が毎月支払われる他、
新規のオーナーを開拓すると紹介料として15000円が支払われる。
Aは「7年間のクレジット支払期間中は、Aの毎月の支払いが止まることはない」と念を押したの
で、CはAとの取引に同意した。
ハ しかし、2年1ヶ月後からAの支払いが停止し、レンタル代理店も2社が倒産した。
今日はクレジット会社に支払停止の抗弁の主張をするに際し、私が思い付いた法律構成を思い
切って提示致します。
1 まず、 AC間の取引は、以下の理由で販売あっせん型の連鎖販売取引(マルチ商法、特定商取引
法第33)と考えられます。
イ Aはレンタル用トライクのオーナー兼個人特約店の開拓(販売のあっせん) をしている。
ロ Aは特定利益(毎月のクレジット代金相当額とトライク購入代金の1%の合計額及び紹介料)
を収受し得ることをもって誘引し、
Cがトライク購入代金232万円という特定負担を伴うことを条件に
レンタル用トライクのオーナー兼個人特約店になる取引である。
Cは会社員であるから、取引は無店舗個人契約である。
ハ Aはトライクの販売をBに委託している。 BとAは提携関係にあり、BはAから紹介された
顧客とトライクの販売契約を締結して、トライクをレンタル代理店に直接引渡している。
Aは一般連鎖販売業者であり(特定商取引法第33条の2)、Bはその補助者である。
2 次に、Aからの支払いが2年1ヶ月後から停止していることから、Aが「7年間のクレジット支払期間
中は、Aの毎月の支払いが止まることはない」と云ったのは、不実の告知になります。
3 よって、CはAとの取引を取消出来ます。 その結果、この取引を前提とするトライクの販売
契約は無効となり、クレジット会社に対し支払停止の抗弁事由を主張出来ます。
4 ただし、連鎖販売取引に関する概要書面も契約書面もAから交付されていません。
これでは、クレジット会社からクレジット契約の表面に現れていない裏の事情と見做され兼ねません。
そこで、二次的にトライクの納車未了を支払停止の抗弁として主張します。
5 クレジット会社はクレジット契約書を交付していませんが、これはCとBの販売契約を通販と見做し
ているからです。
しかし、Cは広告を見て郵便等で申込をした訳ではないので、通販ではなく、ファミレスでの契約で
すから訪問販売になり、クレジット会社は申込書面と契約書面の2つを交付する義務があります。
これはクレジット会社の特定商取引法違反ですし、納車未了に関しては割賦販売法の加盟店調査
管理義務違反であり、販売契約とクレジット契約は共に不適切な契約です。
最高裁判例に拠り信義則からクレジット会社の支払請求を拒み得ます。
さて、レンタルオーナー商法というのは、7年間約束通りの支払いがあるとすれば、オーナーはクレジ
ット代金の支払いを免れる上に168万円程度の収益が入って来ることになります。
低金利の時代にこんなうまい話はないでしょう。 しかし、うまい話には落とし穴があるのです。
しかし、トライクのレンタルの需要がどれ程あるのか甚だ疑問ですし、マルチによる開拓にも限界が
あり、行き詰まるのは必至の商法なのです。
なお、レンタルオーナー商法の商品としては、トライクの他にパチスロ機、太陽光発電のパネル、
コンテナ、クレジットカード決済端末機、ウォーターサーバー、FAXなどの情報通信機器があります。
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