職人型内容証明仕掛人の方法論 ! 第166号
令和3年7月19日発行
職人型内容証明仕掛人が一発解決を目差す合法的仕掛け作りのノウハウ。
今回の目次
□ 内容証明郵便仕掛人18年目の感慨
私は平成14年(2002年)12月に行政書士登録をして自宅でスモールオフィス(1人
事務所)を開業し、翌年9月からネット経由で仕事がぼちぼち来るようになってまも
なく18年が経とうとしていす。
内容証明郵便業務で集客している行政書士は当時殆どいませんでしたから、
予想以上の反響があり、毎年それなりの依頼件数をキープしていました。
異変を感じたのは、本格稼働から10年目の平成25年(2013年)の時で、内容証
明郵便の依頼が突然半減したのです。 この年を境に以前のような月平均4、5
件作成するという状態が回復することはありませんでした。
この劇的な変化の背後に何があったのかについて、 私はこう考えています。
1 訪問販売の減少と個別クレジット契約の減少
クレジットトラブルは、訪問販売での個別クレジット契約(クレカを持たない人
が利用)で発生することが圧倒的に多かったのです。
一番多かったのは、セールストークと実際の内容との大きなギャップでした。
購入者(消費者だけでなく、中小の事業者も含む)が販売店の不実の告知又は
欺罔行為により騙されて契約したというケースです。
経産省はクレジット会社に対し悪徳訪問販売業者との加盟店契約破棄を長年
要請しており、段々悪徳業者は淘汰されて行ったのです。
また、クレジットカードを所持する人が年々増え、ネットでの購入(決裁はカード
決裁)も増えて行きました。
その影響により訪問販売そのものが年々減少して行き、平成13年に9兆円あ
った個別クレジット契約の売上が、平成25年には4.5兆円にまで半減してしまった
のです。
2 特定商取引法と割賦販売法の改正
平成21年12月から改正特定商取引と改正割賦販売法が施行されました。
本改正で、個別クレジット契約のクーリングオフ、不実の告知等による個別クレ
ジット契約の取消が創設され、消費者はクレジット会社に対して既払クレジット代
金の返還請求が可能になったのです。
この結果、消費者は支払停止の抗弁という迂遠な手続きを取らなくても、クレ
ジット会社と直接交渉することが容易になったのです。
3 自然損耗の修繕費は大家負担とする条例の周知徹底
私が開業した当時、アパートの退去時に借主が負担するクロス修繕費用に関し、
借主の過失による損耗部分のみならず、経年劣化(自然損耗)の修繕費まで請求し
て来る大家がゴロゴロいました。
やがて、大家側にも少額訴訟(敷金返還訴訟)で大家が敗訴となることや、条例
で規定する借主負担の修繕費の範囲について浸透するにつれて、リフォーム代の
ような法外な高額請求は段々少なくなって行ったのです。
4 リース契約に関する画期的判例
開業当初から相談が多く寄せられていたものにリース契約があります。
リース契約は中途解約が出来ず、支払停止の抗弁の適用もないというかなり特異
な契約で、判例には消費者契約法によりリース契約の取消を認めた簡裁判決(平
成16年)があるだけでした。
平成24年になって、リース会社に提携販売店に対する監督注意義務違反を認め
る大阪地裁判決が出てから、リース会社は販売店の監督を強化した結果、トラブル
が減って行ったのです。
5 第三者連帯保証人の原則禁止
主債務者が金融機関と金銭消費貸借契約を締結する際、親戚や友人に連帯保
証人を依頼するケースが多くあり、民法では連帯保証契約の解除が認められてい
なかった為、後でトラブルになっていました。
消費者契約法により連帯保証契約の取消が出来る場合があることや金融庁に
よる第三者連帯保証人の原則禁止の方針が周知されるに從い、連帯保証人契約
のトラブルは減っていったのです。
6 法テラスと消費生活センターの活性化
法テラスは平成18年10月に開設された国営の法律相談所で、訴訟をする資金が
足りない消費者に弁護士を紹介していました。
消費生活 センターには消費者トラブルの事例、研究、判例が集積されていて、消
費者にとって無料のシンクタンクになっていました。
消費者は両機関からトラブルの解決法の情報を収集し、自分でも少し勉強すれば
少額訴訟や内容証明郵便を自分ですることも不可能ではなくなったのです。
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