職人型内容証明仕掛人の方法論 ! 第169号
令和3年11月 7日発行
職人型内容証明仕掛人が一発解決を目差す合法的仕掛け作りのノウハウ。
今回の目次
□ 物上保証人に対する競売は時効を中断するか
日本の企業の99.7%は中小企業であり、その中小企業を融資面で支えているもの
に信用保証協会法に基づく保証付き融資があります。
信用保証協会の保証を付け、最低でも代表取締役一人が連帯保証人(個人事業は
不要)になれば、銀行、信用金庫、信用組合などからの融資が受けられます。
1社当たりの融資額は、3千万円位~1億円位に達していると思われますが、融資の
条件は、抵当権の設定も限定的で通常の銀行融資より相当緩いのです。
その一方で、返済途中で経営破綻し、信用保証協会の代位弁済以後に事務所を
閉鎖し、連帯保証人が毎月5千円を細々と返済しているケースも見られます。
代位弁済日から5年以上が経過し、主債務者に信用保証協会から提訴がなされてい
ない場合、連帯保証人は主債務の消滅時効を援用出来ます。 連帯保証人の一部
弁済には相対的効力しかなく(民第148条)、主債務の時効を中断しないからです。
さて、連帯保証人である代表取締役所有の土地に設定した抵当権(主債務を被担保
債権)を信用保証協会が競売申立(物上保証人設定の抵当権実行)した場合、主債務
の消滅時効を中断するのでしょうか。
これに関連する重要な最高裁判例が三つあります。
1 「主債務を被担保債権として抵当権を設定した物上保証人に競売が申立られ、
競売開始決定正本が債務者に送達された場合、民法第155条により債務者に対し
て消滅時効の中断の効果を生じる」(最高裁昭和50年11月21日判決)
2 「主債務の連帯保証債務を被担保債権として根抵当権を設定した物上保証人
に対し、競売が申立られても民法第147条の請求に該当せず、主債務の消滅時効
を中断しない」(最高裁平成8年9月27日判決)
3 「主債務を被担保債権として抵当権を設定した物上保証人に、債権者が競売を申立
た後、信用保証協会が代位弁済(平成9年12月25日)した上で、
債権者から物上保証人に対する担保権の移転の付記登記を受け、差押債権者の
承継を執行裁判所に申し出た場合には、
・・・・・上記代位弁済によって保証人が主債務者に対して取得する求償権の消滅時
効は、上記承継の申出の時から上記不動産競売の手続の終了に至るまで
中断すると解するのが相当である。
競売が配当期日(平成11年9月29日)に終了した場合、求償権の消滅時効は
配当日から改めて進行する。
信用保証協会が提訴した平成16年9月9日時点では、消滅時効は未だ完成してい
ない」 (最高裁平成18年11月14日判決)
判例では、破産申立による主債務の時効中断効について、物上保証人の被担保
債権が主債務か連帯保証債務かに分け、前者なら中断効が生じるが、後者なら
中断効は生じないと判断しているのです。
しかし、通常の銀行融資では、物上保証人の被担保債権は主債務であり、
連帯保証債務であることは稀です。
従って、連帯保証人(代表取締役)所有の土地に主債務を被担保債権として
設定された抵当権が、代位弁済後に信用保証協会により競売が申立られた
場合、
上記1の判例に拠り、主債務の消滅時効を中断し、競売終了日(配当日)から
新たな時効が進行することになります。
※ ご感想・ご意見をお寄せ下さい。
→メールアドレス:redume@jcom.home.ne.jp
発行者 : 行政書士 田中 明 事務所
〒239-0822 神奈川県横須賀市浦賀5丁目42番11号
TEL・FAX 046-843-6976
マガジン説明用Webページ : http://lantana.parfe.jp/break1.html
内容証明郵便でブレイク! : http://lantana.parfe.jp/
インターネット法務支援室 : http://lantana.parfe.jp/seotope.html
-------------------------------------------------------------------
このメールマガジンは、『まぐまぐ』 http://www.mag2.com/ を利用して発行
しています。解除は http://www.mag2.com/m/0000113282.htm