職人型内容証明仕掛人の方法論 !  第181号        
                 令和5年5月11日
     職人型内容証明仕掛人が一発解決を目差す合法的仕掛け作りのノウハウ。
 
                   今回の目次
           □
 保佐人が訴訟行為をする条件

  知人のAさんは、一人暮らしの高齢者Bさん(現在90歳)を2年前老人ホームに入居
するまでの10年近く、食事や病院への搬送・付添いで面倒を見て来ました。

  Bさんは老人ホームに入居する直前に、中程度のアルツハイマー型認知症と診断
され、保佐人(弁護士)が付きました。

  最近になって、Aさんがその保佐人から提訴されたのです。

  BさんがそれまでAさんに送金した合計2500万円は、Aさんに騙され誤認により送
金したものだから同額の損害賠償金を支払え(予備的請求として預託金の残金を支
払え)というのです。
 
  しかし、Aさんは、Bさんからの送金は、買物等の生活支援の報酬であり、買物等
の立替金の支払(買物の代金を、Bさんの指示でAさんが立替ていました)であり、
残りは貸付金であると反論しています。

 つまり、Bさんは加齢と病気の進行で生活支援者が必要になった時、Aさんが30年
前からの知り合いでかつ長い付合いがあったので、Bさんの方から買物等と病院へ
の搬送をAさんに依頼して支援が始まったという経緯があるからです。

 そして、Aさんはこの仕事を「辞めたい」と何度か申入れたことがありますが、その
度にBさんから泣いて「辞めないで。 死ぬまで面倒見てね」と頼まれるし、Bさんの
周囲にBさんの面倒を見れるような人が見当らなかったので、Aさんは続けていたと
のことです。


 Aさんは専属の家政婦兼ドライバーとして働いていた(AさんはBさんと合意があっ
た)のであり、また見守り(食事の配達も兼ねる)でほぼ毎日Bさんの家に通っており、
また至急で度々呼び出されることがあったと云います。

  だから、Aさんとしては、Bさんの送金をその労働の対価又は謝礼、立替金の返済、
貸付金として受取っていたのであるから全く違法性のない金銭だという訳です。

 
 ところで、本件には幾つかの論点があります

1 Bさんに訴訟能力があるか。

   診断書には、「見当識障害が顕著」とあることから、
 Aさんとの家族的な長い付合い関係があった事実、、Aさんが買物代金を店で立替
 ていた事実、不要になった貸付金の一部又は全部を現金で返金していた事実、
 辞めたいとBさんに云うと泣いて辞めないでとAさんを頼っていた事実を、
 Bさんは思い出せなくなっていた可能性があります。

   とすれば、これらの事実は訴訟の争点に係る重要な事実なので、Bさんは訴訟
 能力があるとは云えない程に判断能力が低下していることにならないか。


2 Aさんの月額報酬を幾らにするか

 「買物等の生活支援」の具体的内容
  
  ・ 買物等・・・食材など日常必需品の買物、代金はAさんが立替て支払っていた。
  ・ 食事の準備・・・4割はAさんの手料理、6割は購入した弁当を毎日配達
              していた。 
  ・ 見守り・・・・毎日朝夕の2回は行き、昼も時々行っていた。
           急な用事で呼出されることがよくあった。




  ・ 病院への搬送と付添い
       ・・・・月に8回~5回通院、  5つの病院と7つの診療科
          所要時間は多くて5時間(月1回の点滴の時は、8時間)

    このようにAさんは月の1/4を病院の搬送と付添いに費やし、買物と見守り
  では、ほぼ毎日Bさんの為に働いいたことになります。

   住込み家政婦の月額報酬の相場は30万円~40万円ですから、割引いても
  Aさんの報酬は月額20万円位が妥当と考えられます。

    過去10年間の報酬合計は、20万円×12×10=2400万円になります。

    Aさんは買物等の立替金を毎月5万円負担していたとすれば、10年間の
  負担額は600万円になります。

    結局、Bさんは2400万円+600万円=3000万円を支払う必要かあり、

   2500万円の送金額では500万円の不足が発生することになります。


3 保佐人(弁護士)に本訴訟の代理権があるか
  
   弁護士が訴訟代理人になれるのは当然として、保佐人(弁護士)が常に
 訴訟代理権を有する訳ではありません。

   保佐人が訴訟代理人になれるのは、家裁の審判によって特定の行
 為に
関し訴訟代理権が付与された場合に限られます。


   なお、法定代理人(訴訟行為を含む包括的な代理権を民法上認めら
 れている)が、そのまま訴訟上も法定代理人となります(民事訴訟法28条)。
 

   法定代理人とは・・・・未成年者の親権者又は未成年後見人、
                成年被後見人の成年後見人
                訴訟法上の特別代理人

   また 代理権付与の審判がなされた保佐人や補助人は、法律によって代理
 権を定められたわけではないので法定代理人ではないとされます。
 

   よって、保佐人が家裁の審判で特定の行為に関し訴訟代理権を付与されて
 いることが大前提になります。

   なお、代理権の付与には被保佐人の同意が必要になりますから
 家裁の審判を申立る際、Aさんに対する損害賠償請求に関する訴訟代理権の
 付与と明記する必要があります。

   そして、Bさんの署名・押印がある訴訟委任状( Aさんに対する損害賠償請求
 に関する訴訟代理権の付与)が明記されている)の交付があれば、
 本訴訟の代理権があると、私は考えます。


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