職人型内容証明仕掛人の方法論 !  第183号        
                   令和5年12月5日
     職人型内容証明仕掛人が一発解決を目差す合法的仕掛け作りのノウハウ。
 
                   今回の目次
          □
 契約不適合責任の新設でどう変わったか


  新民法(令和2年4月1日施行)では、旧民法の瑕疵担保責任の条項(旧民法第570
条、第566条)が廃止され、契約不適合責任(種類、品質、又は数量に関し、契約
内容と違ったものを提供して
しまった場合の責任)の条項が新設されました。

  瑕疵担保責任が廃止された理由は、まず旧民法570条( 旧民法566条を準用)の
特定物の「隠れた瑕疵」の定義(取引通念上要求される注意をもってしても発見出
来ない瑕疵)が曖昧で、実務上立証が非常に難しかったのです。

  その結果、特定物の売買の現場では、売主は契約で定めた特定のものを引渡
せばそれでいいとされていたのです。

 そこで、交換や代替物の納品で不具合が解決しない場合の買主を保護する必要
から、買主に解除権又は損害賠償請求権を特別に付与したのが瑕疵担保責任な
のだとする見解(法定責任説)が通説でした。


  契約不適合責任の条項では、買主の解除権又は損害賠償請求権を残しながら
特定物であるか否かに関係なく、一般の債務不履行で認められた追完請求権と
代金減額請求権を認めることにして
、現場の取引実務に適った条項にしているの
です。

  つまり、契約不適合責任を債務不履行責任と考えており、瑕疵は条件ではなく
なり、売主の債務不履行が責任追及の要件とされたのです。


 
 以下では、契約不適合責任により買主が請求できる権利を整理して書きます。

なお、買主がその不適合を知った時から1年以内(任意規定なので、契約書
に行使期限の記載があれば、それに從います) 
にその旨を売主に通知し
ていること
が権利行使の条件になります(新民法第637条1項)。



1 履行の追完請求権

    売主の納品が不完全な状態(契約に不適合)であった場合、買主は

  「修補」、「代替物の引渡し」、「不足分の引渡」しのいずれかを請求出来ます。
                                  (新民法562条)

  ただし、買主に不相当な負担を課すものでないときは、買主が請求した方法
  と異なる方法で追完出来ます  (新民法562条1項但書)。


  また、買主に帰責性がある場合は追完を請求出来ません (新民法562条2項)


2 代金の減額請求権

   追完を請求したのに、売主が催告期間内に追完をしない時は、その不適合
  の程度に応じて、買主は代金の減額を請求出来ます(新民法563条1項。)


   ただし、追完が不能、追完拒絶の明確な意思表示、特定の日時又は一定の
  期間内に履行しなければ契約の目的が達し得ない場合、催告しても追完の見込
  がない場合において、追完がないままその時間が経過した時は、無催告で請求
  出来ます(新民法第563条2項)。


    なお、買主が代金減額請求をすると契約の効力を認めたことになる為、契約
  解除は出来ないと解されます。


3 損害賠償請求権

    債務不履行責任(売主の帰責性が要件)ですから、買主は売主の過失を
  立証して
請求します(新民法第415条)。

    例えば、契約書に雨漏りがすると記載されていれば、雨漏りに関する帰責
   性が売主にない
ことになり、買主は損害賠償請求が出来ません。
  
    買主が善意・無過失であることは要件ではなく、請求の範囲には履行利
   益
(転売利益や営業利益)が含まれます。


4 契約解除権

  A  当事者の一方がその債務を履行しない場合(後発的不能を含む)、
    相当の期間を定めて
履行追完の催告(一般的に2~3日)をして、その
    期間内に履行がない時は、相手方は契約を解除出来ます。



     ただし、不履行が社会通念に照らして軽微である時は出来ません
                                   (新民法第541条)。


      この但書は、「付随的義務違反等の軽微な義務違反が解除原因には
    ならない」とする判例理論(最判昭和36年11月21日)に基づき付加されま
    した。

      相手方の故意・過失は要件とされていません。

     この結果、契約目的の達成が可能であっても不履行が軽微でない場合
   には、契約を解除出来る
余地が生じることになります。


  B  無催告解除は、全部履行が不能、拒絶の明確な意思表示、
    一部履行拒絶の意思
表示があった場合で残存する部分のみの履行では
    目的が達し得ない時、
    特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約の目的が達成で
    きない場合に履行しないまま徒過した時、
    催告をしても契約をした目的を達するに足りる履行の見込みないことが明
    らかである場合、直ちに認められます
(新民法第542条)。


     また、契約の一部の履行が不能な時、債務の一部の履行を拒絶する
   明確な意思表示があった時も、無催告で直ちに認められます。

     履行不能による解除(新民法)では、債務者の帰責事由が排除され、
   履行不能(後発的不能)の
事実のみで足りるとされています。
   


  C  解除の効果として、相互に原状回復義務が発生すると共に損害が発
   生した場合は履行に代わる損害賠償請求権(代金返還請求権等)が
   発生します
 (新民法第540条1項)



  最後に、契約不適用責任の条項も任意規定であることに変わりありません
ので、当事者が合意すれば適用を排除出来ます。  
 買主としては不利益とならないように合意前に契約書をチェックする必要が
あります。


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