内容証明郵便でブレイク !  第55号
              平成20年3月20日発行

              今回の目次
        □ 自費出版と商業出版
        □ 自費出版とクレジット契約



   □ 自費出版と商業出版

  自費出版が、ブームのようです。
一昔前までは、素人が本を出版するなんて夢のまた夢でした。
出版社に原稿を送っても、編集者から直ぐにも突っ返されるのが落ちでした。

  しかし、自費出版に特化する出版社が登場してから、環境が一変しました。
自腹を切って出版費用を負担しさえすれば、見栄えも立派な本を手にすることが可能
になったのです。 中には、自分の本が全国の書店に平積みにされるものと信じて
契約した人もいてトラブルになっています。
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  これまで消費者は出版契約などとは接点がありませんでしたから、
自費出版と商業出版の違いも朧げな認識しか持ち合わせていませんでした。

 自費出版というのは、出版費用を支払って本の製作と販売を出版社に委託するもの
ですから、契約の中身は請負契約+出版契約です。 出版社の主たる債務は、
本の完成であり、それに本の保管と販売という付帯債務が付随しています。
そして原稿料と初版の印税については、支払われないのが通常です。

  一方、商業出版つまりプロの作家などが交わす出版契約というのは、これと全く違います。
出版社が出版費用を負担し、作家は原稿料と印税を貰います。 
本が売れれば売れるほど出版社は儲かり、作家には印税が多く支払われるという仕組み
ですから、商業出版の場合に出版社が売れる本しか相手しないのは当然です。

  これに対して、自費出版の場合は最初に出版経費が入って来ますから、
売れない本であっても出版社はコスト割れの心配がないので出版してくれる訳です。
両者に共通な点と言えば、本の複製権と頒布権を出版社が独占するという点だけです。
これが出版契約の核心部分であり、自費出版も商業出版も本を出版する以上は当然
これが契約に含まれています。
                       
  さて、自費出版のトラブルは、本は完成したものの当初の約束が履行されない(全国800
の書店に本が頒布されない)ことによるものです。 近時の自費出版ブームは、この付帯
債務が最大の魅力になっていたのですから、騙されたと思うのも無理はありません。

 共同出版とか協力出版などと銘打って自費出版を商業出版として扱う商法も問題です。
最近倒産した新風舎などは、明らかに自費出版タイプであるにも拘らず、共同出版だから
商業出版だとして在庫の本の所有権が出版社にあると主張しています。

  しかし、自費出版の契約の実質は請負契約なのですから、本の所有権は依頼者にある
ことになります。 つまり、先の付帯債務の不履行を理由に契約解除した場合、損害賠償と
在庫本の引渡しを請求出来るのです。 
もっとも、出版社が倒産してしまっては元の木阿弥ですが。

 
   □ 自費出版とクレジット契約

  自費出版費用に関しクレジット契約を締結していた人は、クレジット会社から商業出版を
理由に支払い停止の抗弁を拒否されているようです。 実際、クレジット契約書の上部には、
「商行為対応」と表記されています。

  しかし、自費出版が商行為とされるのは、事業者(商人)の立場で契約した場合であって、
消費者の立場で契約していた場合には、支払い停止の抗弁は認められるのです。 
 そももそ商業出版の理由に拒否するのは、全くおかしな話です。
出版社が出版費用を負担する商業出版の場合に、作家などがクレジット契約を利用
する必要性は全くないからです。

  ですから、クレジット契約を利用する人は自費出版をする人に限られますが、
自費出版の契約が商行為とされる場合というのは、消費者が事業者(商人)と見なされる
場合で、事業として又は事業の為に出版契約をした場合に限られます。

  例えば、ネットショップの運営者がネット販売に関する本を自費出版する場合、商人が
事業の為に本を出版するのですから、出版契約は商人の附属的商行為(商行為)
とされます。

 専業主婦が自費出版の契約をしても、消費者の契約であって商行為にはなりません。
では、自宅で翻訳の仕事をしている主婦が翻訳に関するノウハウの本を自費出版する
場合は、どうでしょうか。  
 翻訳業には営利目的があるとしても、翻訳の仕事が専ら賃金を得る為の個人的労務の
範囲に過ぎないと思われる場合にはやはり商人とは見なされません。

  結局、自費出版の契約が商行為になる場合というのは、会社など営利目的の法人が
契約する場合とか、個人事業者が事業として又は事業の為に自費出版する場合なのです。


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