内容証明郵便でブレイク !  第58号
              平成20年7月10日発行

              今回の目次
        □ 信用保証協会の求償債権と消滅時効
        □ 連帯保証人の一部弁済と主債務の時効援用



   □ 信用保証協会の求償債権と消滅時効

  信用保証協会というのは、都道府県に最低一つはあります。 
信用保証協会は、銀行など金融機関が中小企業に融資する際に債務を保証します。
その立場は連帯保証人と同じで、中小企業が弁済を延滞すれば金融機関から
代位弁済を請求されることになります。 

  これは金融機関が債権を楽々と回収する手段が担保されていることを意味しますから、
従って中小企業への融資も円滑になされるという訳です。

  信用保証協会はまた中小企業金融公庫と保険契約を締結しています。 
信用保証協会は代位弁済によって取得した求償権が焦付いても、
保険によってカバーされているのです。 
                       
  さて、信用保証協会が代位弁済すると債務者に対し求償権を取得しますが、
この求償債権というのは商事債権になるのでしょうか・・・・。

  信用保証協会というのは、商人に該当しないとされています。 
そこで、こういう疑問が起こって来るのも分かります。
しかし、この問題は最高裁判決で決着が付いております。

  昭和42106日最高裁第二小法廷判決に拠れば、非商人である
信用保証協会が商人である債務者の委任に基づいて成立した保証
債務を履行した場合において、信用保証協会が取得する求償権は、
商法第
522条に定める5年の消滅時効にかかる
」とされています。
       判決 → 全文

  判決理由により補足致しますと
信用保証協会と債務者間の信用保証委託契約は債務者が営業の為にするものと
推定され、 よって商行為に該当し、当事者の双方に商法が適用されることになります。
  そして、求償権というのはこの保証委託契約を履行することにより、
つまり商行為に因り発生した債権であることから、消滅時効も5年だとしたのです。

 結局、代位弁済日から時効が開始され、5年経過すると消滅時効が完成するのです。

     参考サイ →こうして時効を援用せよ!



   □ 連帯保証人の一部弁済と主債務の時効援用

 信用保証協会が代位弁済した後、5年が経過したとします。
この間に主債務者が弁済していなければ、例え連帯保証人が一部弁済していても、
連帯保証人は主債務の消滅時効を援用出来ます。
  
  これは民法の条文にはっきり書かれていない為、連帯保証人が一部弁済すると
主債務の時効も中断すると勘違いしている人がいるようですので、
以下で、関連の民法の条文から説明します。
                     
  まず、一部弁済というのは民法147条の承認に当たります。
そして、民法148条で「時効の中断は、当事者及びその承継者においてのみ
その効力を生じる」としています。

  つまり、時効中断の効力は相対的効力しかなく、
連帯保証人が承認しても主債務の承認にはならないのです。
                     
 しかし、法律には必ず原則と例外があります。
次に、例外の方です。
民法147条の時効中断事由に「請求」がありますが、
この「請求」による時効中断の効力に限っては、絶対的効力があります

 つまり、債権者が連帯保証人に対し請求すれば、主債務の時効も中断するのです。
その根拠条文は、民法第458条(連帯保証の特則)です。

  民法第458条は、連帯保証の場合に民法第434条から第440条を適用するとしています。
よって、連帯保証人というのは連帯債務者と同じ立場として扱われ、
連帯保証人に請求すると主債務者にもその効力が生じることになります。

  ちなみに、連帯債務者の一人に生じた事項が他の連帯債務者にも効力が生じる、
つまり絶対的効力のある事項とは、請求(第434条)、更改(第435条)、相殺(第436条)
免除(第437条)、混同(第438条)、時効(第439条)の6つに限られているのです。

  そして、第440条(効力の相対性の原則)では、「前6条に掲げたる事項を除き、
連帯債務者の一人に生じた事項は他の連帯債務者に効力を生じない」
とされており、
連帯保証人の一部弁済は前6条に掲げる事項には該当しない以上、
相対的な効力しかなく主債務の時効を中断しないということになる訳です。
                      
  最後に、連帯保証人に対する請求と一部弁済の違いをまとめます。
    ・ 連帯保証人に請求 → 主債務の時効も中断します。
    ・ 連帯保証人が一部弁済 → 主債務の時効は中断しません。

  ※ なお、請求とは裁判上の請求その他法的手続きをいいます。
   催告書が幾ら届いても、時効を中断するような請求には当たりません。

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