内容証明郵便でブレイク ! 第60号
平成20年10月20日発行
今回の目次
□ クレジット契約と連帯保証契約の締結の媒介
□ 動機に関する不実の告知
□ クレジット契約と連帯保証契約の締結の媒介
私がずっと以前から大変気になっている問題があります。
第三者の詐欺により結ばされた連帯保証契約が、消費者契約法により取消せるか
という問題です。
商品をクレジットで購入する際、販売店から連帯保証人を付けるように云われて、
債務者が連帯保証人を探してくることがあります。
この場合、連帯保証契約の当事者はクレジット会社と連帯保証人ですから、
連帯保証契約のお膳立てをした債務者は第三者ということになります。
これまでは、債務者の欺罔行為により連帯保証人になった場合、連帯保証人が
連帯保証契約を取消せるのは、クレジット会社が悪意又は重過失の場合に限られて
いました(民法第96条第2項)。
しかし、今では消費者契約法に関する判例の蓄積も進んでいます。
債務者が消費者契約法第5条の受託者等に該当するとされれば、クレジット会社が
債務者の詐欺を知らなくても連帯保証契約の取消が出来ることになります。
ただ判例としては確立していないのが悩みです。
さて、近時の判例では、クレジット会社は販売店と加盟店契約を締結しており、
クレジット契約締結の媒介を販売店に委託しているという事実関係を認定しています。
つまり、販売店は消費者契約法第5条の受託者等に当たるとして、消費者は
消費者契約法により直接クレジット契約を取消して既払クレジット代金の返還を
クレジット会社に請求出来るとしています。
参考 → 大阪簡裁平成16年1月19日判決
この判決は、改正割賦販売法を先取りした画期的な判決と云えます。
ところで、この考え方を連帯保証契約に敷衍出来ないものかと思います。
クレジット会社が自分で連帯保証人を探すということはしません。
クレジット会社の依頼により連帯保証人を探して来て連帯保証契約締結に向けて
尽力するのは専ら債務者です。
クレジット契約締結の媒介委託関係を認めるなら、連帯保証契約締結の媒介委託
関係も認めていい筈です。
クレジット契約書は連帯保証契約書を兼ねており、クレジット会社は連帯保証人への
意思確認の後に決裁をするだけで、それ以外の連帯保証契約締結に必要な事務は
販売店に任せているという事実関係は、クレジット契約締結の媒介委託関係があれば
通常認められると思うからです。
それならば、連帯保証契約締結の媒介を委託された販売店は、
さらにそれを債務者に再委託していると考えても全く不自然ではありません。
再委託された人は、消費者契約法第5条の受託者等に当たります。
私が、泣く連帯保証人を救える消費者契約法という山口信恭松江地裁判事の記事を
見たのは、消費者契約法が施行された平成13年頃でした。
記事 → http://www.j-j-n.com/opinion/past2003/010702.html
この中で、「消費者契約の仲立をした人が嘘をついた場合、契約を取消せるとなって
います。 もともと代理店が詐欺商法をした場合を念頭にしたものですが、特に限定は
ないのでどんな契約にも使えます。・・・・・ 私の考えは新しい考えなので、裁判官が
理解するには時間が掛かるかもしれない」と書いています。
連帯保証契約締結の現場をよく分析すれば、債務者が受託者等に当たると考えられて
然るべきです。 一日も早い判例の確立を願って止みません。
□ 動機に関する不実の告知
シロアリの点検商法というのがあります。 点検した後に「シロアリがいる」と言って
駆除契約を締結させられ、後になってシロアリがいなかったことが分かります。
この場合、「シロアリがいる」という説明に不実の告知がありますが、それは駆除契約
の前提になる動機に関するもので重要事項に関するものではないという議論があります。
しかし、判例によれば契約を締結する必要性、相当性も重要事項に含まれるとした
ものがあります。
また、業者はシロアリがいないのを知ってシロアリ駆除契約を勧誘しており、
シロアリ駆除契約を締結してもシロアリの駆除という目的は実現されないのですから、
契約の用途に関し不実の告知をしているのだ考えることも出来ます。
ですから、動機に関する不実の告知であっても、
消費者契約法による取消が出来ないと諦める必要は全くないのです。
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