職人型内容証明仕掛人の方法論 ! 第66号
[ 旧タイトル 内容証明郵便でブレイク! ]
平成21年3月1日発行
職人型内容証明仕掛人が一発解決を目差す合法的仕掛け作りのノウハウ。
今回の目次
□ 日常家事連帯債務について
☆ 夫名義のクレジットカードを妻が使用した場合
☆ 妻の日常家事代理権について
□ 日常家事連帯債務について
☆ 夫名義のクレジットカードを妻が使用した場合
夫名義のクレジットカードを使って妻が消費者金融から借入れをすることは、
それほど珍しいことではないと思います。
その返済が滞れば、催告状が名義人の夫宛に届くことになります。 妻が夫に
内緒でクレジットカードを使用していた場合、夫は支払いを拒否出来るのでしょうか。
妻の借入れが日常家事に当たれば、夫も債務を負担しなければなりません。
民法第761条では「夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をした時は、
他の一方はこれによって生じた債務について、連帯してその責任に任ずる。
但し、第三者に対して免責の予告をした場合は、連帯責任を排除できる」と
規定しているからです。
そして、昭和44年12月18日の最高裁判決では、
次の2つの日常家事連帯債務に関する重要な判断が示されています。
1 民法第761条は、夫婦が相互に日常の家事に関する法律行為につき
他方を代理する権限を有することを規定しているものと解すべきである。
2 夫婦の一方が民法第761条所定の日常の家事に関する代理権の範囲を超えて
第三者と法律行為をした場合、・・・・・・・第三者においてその行為がその夫婦の
日常の家事に関する法律行為に属すると信ずるにつき正当の理由のある限り、
民法第110条の趣旨を類推して第三者の保護を図るべきである。
分り易く説明致しますと、
まず1では、夫婦には日常家事に関する基本代理権があると云っているのです。
しかし2では、その基本代理権の範囲を超えて一方が取引したとしても、第三者が
日常家事に属すると信じるにつき正当な理由がある場合には民法第110条の趣旨
を類推して第三者の保護を図るべきであると云っているだけです。
即ち、夫婦の日常家事に関する基本代理権が表見代理の基礎となるとは少しも
云っていないということです。
上記判例理論に拠れば、妻の買い物であっても、業者側に日常家事の範囲だと
信じるにつき正当な理由があれば夫に請求出来ることになります。
このように本条は業者にとって大変有難い条文なのです。
尤も、それはあくまで日常家事の範囲に限ってのことです。
妻が夫に内緒で借りたローンが高額でしかも日常家事以外に使用した場合なのに、
サラ金が日常家事だと主張して夫に請求して来ることがありますが、
それは本条を悪用したものであって、認められるものではありません。
サラ金のローンが生活費の補填とか衣類・食料品の購入、医療、保険、子供
の教育費など夫婦の共同生活に必要な費用に使った場合に限り、
日常家事連帯債務となって夫婦の一方が知らなくても双方の連帯債務になる訳です。
☆ 妻の日常家事代理権について
日常家事連帯債務は、これまで業者側の保護という観点から論じられるのが普通
でしたが、逆に夫又は妻の側から積極的に日常家事の代理権を主張することは
出来るのでしょうか。
例えば、妻が夫名義のキャツシングカードを使用して生活費の補填の為に7年以上
使って来て、70万円位の残元本になっていた場合、
妻は過払金返還請求をしたり、業者と和解が出来るのでしょうか・・・・・。
夫名義のカードを使用している以上、本来は夫がすべきなのは当然です。
ですから、状況としては、夫婦が家庭内別居のような状態にあったり意思の疎通が
ないような場合が想定されますが。
先の最高際判決に拠れば、夫婦に日常家事に関する基本的代理権があります。
代理権とは一方が他方を代理して法律行為をする権限のことです。
代理権の範囲が明確でない場合でも、代理人には保存行為や利用行為・改良行為
をする権限があります(民法第103条)。
保存行為とは財産の現状を維持する行為です。 従来から、時効の援用は保存
行為されていました。 時効の援用により債務が消滅して財産の現状は維持される
からです。
妻にも日常家事代理権があるのですから、保存行為として時効を援用して
日常家事連帯債務を消滅させられる筈です。
であるならば、過払金の返還請求や利息制限法に基づき再計算した残元本の分割
返済についての和解なども、夫が不利益を受けない以上は保存行為であるとして妻が
代理して出来ると考えていいのではと思うのです。
業者としても夫との連絡が取れない等の事情がある場合、自分の債務ですと名乗り
出た妻との和解に応じることは、効果は夫にも及ぶのですから夫と和解するのと全く
同じであり、その意味で何らの不都合もないと思うからです。
尤もこれらは学者の間でも議論がなされておらず、私見に過ぎませんが。
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