職人型内容証明仕掛人の方法論 !  第88号
               平成23年4月7日発行
    職人型内容証明仕掛人が一発解決を目差す合法的仕掛け作りのノウハウ。

               今回の目次
        □ 敷引特約に関する最高裁判決



     □ 敷引特約に関する最高裁判決

  最高裁は平成23年3月24日に敷引特約に関する初判断を示しました。
地裁レベルでは敷引特約を消費者契約法第10条に反し無効とする判決が多く
出ており、最高裁の判断が待たれていたのです。

  敷引特約とは関西の慣習として見られるもので、明渡し時に敷金(保証金)から
建物の破損・損耗の有無に関係なく賃借の年数に応じた金額を控除して残金を
返還するいう特約のことです。

  さて、最高裁は
「消費者契約である居住用建物の賃貸借契約に付された敷引特約は、当該建物
生ずる通常損耗等の補修費用として通常想定される額、賃料の額、礼金
等他の一時金の授受の有無及びその額等に照らし、敷引金の額が高額に
過ぎると評価すべきものである場合には、


当該賃料が近傍同種の建物の賃料
相場に比して大幅に低額であるなど特段の
事情のない限り、

信義則に反し消費者である賃借人の利益を一方的に害するものであって、
消費者契約法10条により
無効となると解するのが相当である」
と判示しています。   →判決全文

  なお、本事案では、以下の事情から敷引金の額は通常損耗等の補修費用と
して通常想定される額を大きく超えるものとまではいえないとしています。

  <敷引特約の内容>            
    経過年数       控除額      
    1年未満        18万円      4年未満        27万円  
    2年未満        21万円      5年未満        30万円 
    3年未満        24万円      5年以上        34万円
      
  <賃貸借契約の内容>
    賃料   月額9万6000円、   保証金 40万円、  礼金 なし
    賃貸期間   平成18年8月21日〜平成20年4月30日
    通常損耗については敷引により賄い、借主は原状回復を要しない。
    更新料 9万6000円
  
   貸主は40万円−21万円=19万円を借主に返還していました。
 
 最高裁の判断は大家側の立場も配慮し、賃貸借契約の条件や近隣の家賃相場
などから総合的に判断しています。  

 もし礼金を取っていたり、家賃がもっと高かったりしたら、消費者契約法第10条に
照らし敷引特約は借主の利益を一方的に害し無効であるとする判決になっていた
かもしれないのです。

  前回メルマガ87号に載せました最高裁平成17年12月15日判決では、
契約書の条項に借主負担とする自然損耗の具体的な範囲が一義的に明白に
記載されているか、又は貸主が口頭で明渡し時の借主負担とする自然損耗
の具体的な範囲を説明して借主が納得している場合でなければ、
通常損耗補修特約の成立は認められないとしていました。

  さて、今度の最高裁判決ですが、
敷引金(借主負担とされる自然損耗分の原状回復費の具体的金額を定めたもの
です)の金額が消費者契約法第10条に照らし借主の利益を一方的に害しないか
どうかは、
家賃の額に比べ敷引金が高すぎないかとか、礼金を取っているのに高すぎない
かとか要するに全体のバランスの中で判断すべきと云っているのです。


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