職人型内容証明仕掛人の方法論 ! 第89号
平成23年5月23日発行
職人型内容証明仕掛人が一発解決を目差す合法的仕掛け作りのノウハウ。
今回の目次
□ 無効にならない自然損耗修繕費特約の要件
□ 無効にならない自然損耗修繕費特約の要件
貸主から明渡し時に予期せぬ法外な原状回復費用を請求されるという事態が
まだあるようです。
現在では最高裁判決を含む判例の蓄積が進み国交省のガイドラインや東京都
の条例などもあり貸主や仲介業者への啓蒙も進んで来たように見えますが、
まだ昔ながらにリフォーム代まで請求して来る大家がいるのです。
私のホームページに修繕費用の妥当性チェックシートというのを掲載してあります。
http://lantana.parfe.jp/sikikin03.html
これは専ら借主側が利用するチェックシートです。
逆に貸主はこのチェックシートを参考にして賃貸借契約書を作れば最善の
予防法務になるということです。
そこでもう一度ポイントを整理して見ます。
まず、原状回復義務の範囲ですが、判例に拠れば
「借主の居住、使用により発生した建物価値の減少の内、借主の故意・過失、
善管注意義務違反その他通常の使用を超えるような使用による損耗等を
復旧する義務」とされています。
この結果、自然損耗(通常損耗等)及び経年変化(自然的な劣化・損耗等)の
修繕費用は原状回復費用に含まれないことになります。
そもそも毎月の家賃の中に自然損耗分の費用が含まれているのですから、
退去時に更に請求するのは二重請求になるというのがその理由です。
つまり、借主は借主の過失による破損・損耗等の修繕をすれば十分であり、
リフォームをして入居当時と完全に同じ状態に戻す義務はないということです。
その一方で、契約自由の原則により借主に自然損耗分を一部負担して貰う
特約(自然損耗修繕費特約といいます)も認められるというのが判例の態度です。
ただし、常に有効となるのではなく特約に必要性や合理性がある場合に限ら
れるとされます。 自然損耗修繕費特約が有効とされる要件は判例に拠れば
以下の4つをクリアしていることとされています。
イ 貸主が説明したという証拠(借主が認識していたという証拠)がある。
契約書の条文の中に印字された字でさらっと盛り込んだり、署名・押印の
ない「入居のしおり」の中で借主負担としたり、負担区分表を渡しただけで
は貸主が説明したという証拠になりません。
重要事項説明書や署名捺印のある覚書を証拠として残す必要があります。
ロ 特約の内容を借主が正確に理解したという証拠がある。
借主が自然損耗分の修繕費を負担する旨が契約書に明記する必要があり、
それがない場合は無効とされ、条文の限定的解釈がなされます。
即ち、「退去時に借主はクリーニング費用を負担する」の場合は
→ 故意過失による汚損に伴うクリーニング費用と解釈されます。
ハ 借主が将来負担すべき修繕費の予測が明確である。
イ及びロの要件を満たしていても借主が契約時に将来負担すべき修繕費
の金額を予測することが困難な場合は、消費者契約法第10条により無効と
されます。
参考 →平成16年3月16日京都地裁判決
ニ 公序良俗違反でない。 (ただし、公庫物件に限定されます)
公庫物件の場合、特約は公庫の設立趣旨に著しく反するとしてイ〜ハを
議論するまでもなく民法90条により無効とされます。
なお、一般物件の場合はイ〜ハにより無効性が判断されます。
さて、現在ある賃貸借契約書の自然損耗修繕費特約はまず殆どが上記ハに
引っ掛かる可能性があります。
つまり、借主にどうしても自然損耗分の一部を負担して貰いたい場合には、
「ハウスクリーニング代一律3万円」のように明記する必要があるということです。
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