情報のコーディネーター  第151号
     
         令和5年12月19日発行
         窮すれば通ず。 情報こそ反転の力なり。 コトバで心の壁を破れ。

                       今回の目次
       □  認知症高齢者対策としての「委任契約及び任意後見契約」

  
  認知症高齢者のいる親族が後見人の検討を迫られる時に次の場合があります。

  銀行が預金者を認知症だと判断して口座を閉鎖し「後見人を付けないと対応出来ません}
と云って来た時、

  認知症に罹り老人ホームと入居契約を締結する時に、法定後見人を付けるように云われ
て断ると、「自治体の方(市長が申請)に遣って貰います」と云われた時などです。

  しかし、認知症高齢者が約600万人いると云われる中で、成年後見人が付いている人は
2.5%(約15万人程度)しかいません。
 
  つまり、本人から委任状と銀行印を預かった親族や「委任契約及び任意後見契約公正
証書」作成している任意後見受任者(家裁にまだ任意後見監督人の選任を申請していない)
でも、本人の預金を下ろすことが出来ますし、老人ホームとの入居契約の立会いも可能です。



  ここで、成年後見制度について整理して置きます。
成年後見人には任意後見人と法定後見人があります。

  任意後見人は、本人がまだ判断力のある内に公証役場で「委任契約及び任意後見契
公正証書」を作成しておいて、本人が認知症に掛かった段階で任意後見人に指定された
家族や知人など(任意後見受任者という)が、任意後見監督人選任を家裁に申請して就任
します。

  本人のお声が掛った人を選べるので、任意後見人と呼ぶのです。

  結局、任意後見人の効力は任意後見監督人が選任された時まで待たねばならない
(実際に任意後見人の発効まで行く人は4%位です)、
公証役場では、本人の希望により委任契約をセットで公正証書にして、直ちに本人の財
産管理が始められようにしているのです。


  つまり、任意後見受任者であっても、公正証書の委任契約に基づき本人の預金を下したり、
老人ホームの契約に立会うことが可能になっているのです。

  これはまだ判断力が低下していない段階にあっても、本人が自分でやれない状態にあれば
いつでも財産管理を任意後見受任者に依頼出来る大変使い勝手のいい制度と云えます。

 そして、公正証書の委任契約に基づく代理権の範囲は、任意後見監督人が選任されて発
効した任意後見人の代理権の範囲と全く同じなのです。


  一方、法定後見人は、認知症により判断力が低下した段階で、利害関係人が家裁に申請し
て弁護士、司法書士、親族などから家裁に選んで貰って就任します。

  現在、弁護士、司法書士から選ばれることが多く、法定後見人が就任すると契約解除が出
来ない為、仕事がなくなっても本人が亡くなるまで報酬を支払い続けなければならないことが
問題視されており、国会でも成年後見制度の改正が検討されています。


  宮内康二氏は『成年後見制度の落とし穴』の中で、成年後見制度の欠陥を指摘し、認知症
高齢者も任意後見で対応できると主張しています。

  この本は法定後見制度の問題点を鋭く突いた好書です。
ただ、委任契約とセットにした任意後見契約で初めて認知症高齢者対策の対応も可能になる
点については、余り詳しく解説されていませんでしたので、今回触れた次第です。

 

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