インターネット行政書士のフロンティア戦略  第104号   
                 平成25年3月26日発行 
      
民事法務のフロンティアに鉱脈を目差すインターネット行政書士のマインドと戦略。

                  今回の目次
           □ 民法改正中間試案について



  民法の総則・物権・債権編は明治29年(1896年)に制定され、明治31年(1898年)7月16日
から施行されています。

 しかし、その後は昭和22年(1947年)に家族編の改正(家制度の廃止)、平成12年(2000年)
に成年後見制度の創設、平成17年(2005年)に根保証の改正と条文の口語体化があった
程度で殆ど改正されないまま今日に至っています。

  この度、100年振りに民法の契約法で大改正がなされることになり、法務省法制審議会
の民法改正部会はその中間試案を公表しました。   
早ければ2015年(平成27年)の通常国会に法案が提出される予定です。

  中間試案に見られる改正の骨子は、以下の通りです。

1 経営者以外の個人保証(「第三者保証」)は無効とする。

   中小零細企業が融資を受ける際には信用保証協会の保証を付け、代表取締役が
 連帯保証人となり、更に親族や友人が連帯保証人にさせられるのが通常でした。
  経営に関わらない者の保証のことを「第三者保証」といいます。

   ところで、破産法に拠れば主債務者が破産しても連帯保証人は責任を免れず全責
 任を負うことになります。

   つまり、連帯保証というのは無償の慈善行為であり、何ひとつ恩恵を受けずにリス
 クのみを負う謂わば現代の人質制度なのです。   特に「第三者保証」では主債務
 者の経営に関与していないのですからどう考えても責任が重過ぎます。
 
   金融庁がやっと重い腰を上げ監督指針で「第三者保証」を禁止したのは2011年です。
 民法改正でも経営者保証は残るようですが、政府は会社が破綻しても代表者が生活
 基盤を失わず再起を可能になるような全財産没収防止ルール又は裁判所による保証
 債務の減免などの救済措置を新設するとしています。

   なお、住宅ローン、アパートの賃貸借契約、奨学金の借入れでは、個人保証を認め
 るものの、貸主に説明義務を課し違反した場合に連帯保証の取消が出来ることも検
 討されています。

2 約款に関する規定を新設し、不当条項を無効とする。
    約款は広く定着している契約ルールでありながら根拠条文がありませんでした。
   判例理論を民法で条文化することになります。

3 遅延損害金の法定利率を現行の5%から3%に引き下げ、年1回の0.5%刻みの変動制
 とする。

4 債権消滅時効は全て5年に統一する。
   10年の時効と短期消滅時効が廃止されます。 

5 債権譲渡禁止特約の効力を緩くする。
   中小零細企業が代金請求権を譲渡するのを容易にして資金確保の道を担保する為
  です。

6 欠陥商品であった場合、購入者に修理や代金減額請求権を認める。

7 暴利行為や意思無能力による契約を無効とする規定を創設する。

8 契約交渉を不当破棄した場合は損害賠償責任を負う。
   契約成立は確実との正当な期待が生まれた後に交渉を不当に破棄した場合などです。

9 契約締結過程で情報提供義務に違反した場合は損害賠償責任を負う。
   契約当事者間に大きな情報格差があって、弱者に対して情報提供義務がある場合です。

10 賃貸借契約終了時の自然損耗分の原状回復義務は貸主負担とする。

 なお、1、3、4、5は別として、判例理論として確立している考えを条文化したものだと云えます。

   
  余談になりますが、近代の民法は「ナポレオン法典」(今は「Code Cvil」という、1804年制定)
に始まるとされます。    ナポレオンは民法典の制定会議で議長を務めるなど法典制定
に大変熱心で、「自分の最大の業績は法典の制定である」と云ったそうです。

  明治政府は不平等条約改正の条件として民法制定が不可欠として、フランスからボアソナ
ードを招聘して起草に当たらせます。
     
  しかし、明治29年制定の現民法ではドイツ民法草案(当時まだドイツ民法が完成せず施行
は1900年です)が大きく影響していました。
  尤も、近年、現民法の内容はナポレオン法典をベースに構築されているとする主張も有力
です。
 
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