インターネット行政書士のフロンティア戦略  第135号   
                      平成28年12月8日発行 
           
民事法務のフロンティアに鉱脈を目差すインターネット行政書士のマインドと戦略。

                         今回の目次
                     □ 
オバマケアについて



  オバマケアが2010年に導入されるまで先進国の中でアメリカだけが国民皆保険ではありませんで
した。

  尤も、65歳以上の高齢者についてはメディケアという公的保険に自動的に加入していましたし、雇用
労働者の多くも雇用主か福利厚生の一環として提供する民間医療保険に加入しており、貧困層には
メディケイドという貧困者向け公的保険がありました。

  しかし、メデイケイドの加入要件をクリア出来ないで無保険者になる者が少なからずいて、虫歯に
なっても治療が受けられないという悲惨な状況がありました。

  オバマケアでは、メディケイドの加入要件を緩和して収入のみに限定した結果、それまで未加入だっ
た貧困者を吸収して無保険者を大幅に減らすことが出来ました。

  無保険者が2010年で16%(4900万人、6人に1人)いたのに対して、2015年には9.1%(2900万人)まで減少
しています。

  無保険者にはメディケイドの加入要件を満たさない人の他、メディケイドに加入するほど貧しくないが
民間医療保険に加入するほど豊かでもないという人々もいました。

  オバマケアでは、メディケイドに加入するほど貧しくないが民間医療保険に加入するほど豊かでもない
という人々に対して保険料の一部を補填して民間医療保険に加入させることにしました。

  また、裕福な人に民間医療保険への加入を義務化して保険料収入をアップさせています。


  ところで、このオバマケアの結果、保険料が大幅に値上がりしたり、増税になったり、保険金の支払い
が急増したりということが起こっており、それまで民間医療保険に加入していて税金もまともに納めていた
白人中間層から不満が出ていました。

  これら白人中間層の支持で当選したのが次期大統領のトランプ氏なのであり、トランプ氏はオバマケア
の撤廃を主張しています。  しかし、撤廃はそう簡単ではなさそうです。

  法律の撤廃には上院の6割の賛成(つまり100議席中60議席の賛成)が必要ですが、共和党は51議席しか
なく、民主党はオバマケアに賛成して通した手前もあり撤廃に賛成することはあり得ないからです。

  ただし、「財政調整」という既存の法律の歳出と歳入に関わる部分だけを変更する手続きなら過半数の
賛成で可能です。

  オバマケアで云えば保険料に対する補助金、個人の加入義務、雇用者の従業員への保険提供義務など
か共和党議員の賛成だけで可能になります。

  しかし、上記変更による大変な混乱が予想され、実際には変更は容易ではないと考えられます。

  オバマケアでは、雇用者から民間医療保険の提供を受けていない人の為に「エクスチェンジ」という政府
主導の保険を設定して加入出来るようにしましたが、これが壊滅して無保険者がどっと増えることになります。

  更に、オバマケアの財源を確保する仕組みが崩れることで400億ドル規模の財源不足が発生する恐れが
あります。

  保険会社からの反発も必至です。  つまり、オバマケアの核となる部分の法律の変更は出来ないので、
保険会社は既往症を理由に加入を拒否したり、保険料を高く設定することが出来ないことは変わりません。

  そうなると、病気と診断されてから加入する人が増え、保険加入者は医療費を多く使う人ばかりになります。

  これらのことを総合しますと、オバマケアは所得格差による不公平を縮めた画期的な法律であり、制度設計
的に見てもよく出来た法律なのですから、一部変更が可能であるとしても変更の範囲は恐らく最小限に留まる
ように思われます。


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