インターネット行政書士のフロンティア戦略  第69号   
                 平成21年6月13日発行 
    民事法務のフロンティアに鉱脈を目差すインターネット行政書士のマインドと戦略。

                  今回の目次
          □ 不動産流動化の手法について
             ☆ 抵当権消滅請求と滌除の違い
             ☆ 任意売却とは何か



     □ 不動産流動化の手法について
             
    ☆ 抵当権消滅請求と滌除の違い
 今日は不動産流動化の手法(旧制度の滌除、新制度の抵当権消滅請求、競売、
任意売却)について、その相互の関係を整理して見ます。

<事例> AさんはB銀行の融資1億円でビルを購入し、ビルにはC保証会社が1番抵当権、
  B銀行が2番根抵当権を設定。  10年後に、Aさんは返済(月額50万円)を3ヶ月延滞
  したので、CがBに代位弁済。  
   その時、Aさんの残債務が6000万円、税の滞納が500万円(差押)あるのに対して、
  ビルの時価(実勢価格)は5000万円しかありません。

 平成16年4月以前まではCがビルの競売をして来る前に、滌除という手段がAさん側に
ありました。  
 滌除を簡単に説明しますと、AさんはビルをDに売って(価格は幾らでもよく、差押の解除を
条件に500万円としてもいいのです)、Dが滌除をCに請求します。  
つまり、第三債務者が例えば4000万円を支払うから抵当権を抹消してくれと云うのが滌除で、
実質的には債務者主導の競売のようなものです。
                         
 ところで、こんな債務超過のビルをなぜDは買うのでしょうか。
それはCが増価競売(1割増の4400万円)をして来ないと踏んでいて、しかもDは抵当権の
取れたビルを5000万円で転売出来る目途があるからです。

 実際、これまでは滌除が通って競売にならない事例が多かったようです。
その結果、上の事例でいくと、Cは4000万円しか回収出来ず、無担保の債権2000万円が
残ります。 そして、Cは2000万円を回収不能と判断すれば、サービサーに債権譲渡して
無税償却することになります。

 滌除が合法な不動産の流通手段とはいえ、実際は滌除屋が不当に低い価格で抵当権を
除去する手段として悪用されていた側面が強いものだったと云われています。
                        
 平成16年4月1月から滌除制度は抵当権消滅請求制度(民法378条〜387条)に切り替り
ました。  滌除の骨格は残しつつ抵当権者に有利に条文に改正されています。

 即ち、抵当権者には滌除の機会を与える為の事前通知義務がなくなり、抵当権消滅請求
を拒否して競売する場合でも増価競売から通常競売(滌除の場合なら1ヶ月以内だったのが
2ヶ月以内に延長)に修正され、落札者が現れない場合も抵当権者に買受義務がないだけで
なく、抵当権消滅請求の効果そのものが発生しないことになりました。


   ☆ 任意売却とは何か
 この法改正後は、抵当権消滅請求があっても金融機関は競売をして来るようになりました。
そこで、債務者側に残されている手法としては、債権者から売却価格の同意を取って行う
任意売却が有効とされています。

 競売では売却基準価額(従来の最低売却価額)より20%減の買受可能価額が入札最低
ラインとなります。 従来は最低売却価額の1本でしたが、平成17年4月1日に民事執行法
が改正されてから2つの価格が公示されることになりました。

 即ち、1回目の競売で売却基準価額(実勢価格より2割程度低い)から更に2割も低い価格で
入札出来ることにして、売却の早期実現を図ったのです。

 上の事例で仮に任意売却の価格を5000万円にした場合、競売よりは債権者にメリットが
あるのは明らかです。
 つまり、上の例でいえばCは5000万円を回収出来て、残債1000万円をサービサーに譲渡
するに留まります。
                        
 さて、抵当権消滅請求は競売による差押の効力が発生する前でなければ出来ません。
しかし、任意売却は開札期日(競売開始決定から3ヶ月以内)の前日までならば理論的に
可能であり、競売と同時平行に進められるのです。
                         
 任意売却の最大のメリットは、債務者が残債の処理についても債権者と協議出来ること
です。 通常、残債は一時金で処理されます。 

 どういうことかといいますと、上の例でいえば残債1000万円がサービサーに100万円で
譲渡されたとしますと、Aさんは110万円位で買い戻すことが出来るのです。
 Aさんは残債をゼロに出来た上、買主からビルを賃借すれば今まで通りビルに住み続け
られるという訳です。
                        
 入札の開始後でもまだ方法はあります。
1回目の入札で落札者がいないと、2回目の入札では最低ラインは大幅に下って半分位に
なることがあります。 

 上の例では2回目で1600万円位に下った時、親戚のFさんとかに協力してもらうのです。
Fさんには1割増の1760万円を支払うから抵当権を抹消し競売を取下げてくれないかと
Cに掛け合って貰います。

 競売による差押後は、毎月の返済を支払う必要がありません。 毎月の返済が50万円
なら、1年も経てば600万円も溜まります。  Fさんの負担は1160万円でよいことになり、
またCにとっても最低ラインより1割増の金額なら呑めない話ではありません。
これにより落札に失敗して赤の他人にビルを取られてしまうこともなくなります。
                       
 抵当権消滅請求制度は競売屋に有利になったと云われます。 
競売屋は素人に転売して利益を得るのが目的なので、売れそうもない物件には手を
出さないという。 
  実務は法律を凌駕するといいます。 
不動産の実務を磨いて、競売屋との情報戦争に勝利したいものです。
 


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