インターネット行政書士のフロンティア戦略  第94号   
                 平成24年3月23日発行 
     
民事法務のフロンティアに鉱脈を目差すインターネット行政書士のマインドと戦略。

                今回の目次
         □  割賦払い債務と消滅時効の起算点       



  クレジット契約に基づく分割払い債務、消費者金融のリボルビング払い債務、銀行の
当座貸越契約に基づくリホルビング払い債務など、要するに毎月一定額を返済していく
債務のことを割賦払い債務といいます。

  クレジット会社や消費者金融会社の約款には「1回支払いを怠ると期限の利益を喪失
する」旨が記載されているのが普通です。

  その場合、毎月の支払いを1回怠ることで期限の利益を喪失し、その日が残金全額
についての消滅時効の起算点となります。

  しかし、銀行の当座貸越約款でば、破産や相続の開始(つまり本人の死亡)の
場合なら直ちに期限の利益を喪失するが、延滞している場合には「銀行から請求
があった時」に期限の利益を喪失する旨記載されているのが通常です。
 
 よって、延滞があったとしても銀行から請求がない限り一括返済の義務を負わない
ことになります。
 
 当座貸越契約というのは、貸越極度額の範囲内なら自由にカードで融資が受けられ
るというもので、返済方法は毎月決められた返済額を返済するリボルビング方式です。

  これは、融資額の拡大に主な狙いがあったバブル期の名残のような商品ですから、
極度額まで貸し付けておいて延滞が何度もあるのに銀行は一括請求をしないという
ことが見られました。

  さて、銀行の当座貸越による割賦払い債務の消滅時効の起算点については、戦前
から債権者意思説(債権者が請求した時)と即時進行説(延滞の時)の対立がありま
した。

  しかし、昭和15年3月13日の大審院民事連合判決が債権者意思説を採ったことで
決着が付いて、現在の最高裁でも踏襲されています。

「割賦金弁済契約において、割賦払の約定に違反したときは債務者は債権者の請求
により償還期限にかかわらず直ちに残債務全額を弁済すべき旨の約定が存する場合
には、一回の不履行があっても、

各割賦金額につき約定弁済期の到来毎に順次消滅時効が進行し、債権者が特に
残債務全額の弁済を求める旨の意思表示をした場合にかぎり、
その時から右全額について消滅時効が進行するものと解すべきである」
                     (最高裁昭和42年6月23日第二小法廷判決)

  尤も、我妻栄を始めとして即時進行説を支持する学者が多く、この議論の燻ぶりは
消えていないのですが、最高裁判決が確定している以上、実際の裁判では債権者
意思説に立たない限り勝てないということになります。

   
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