行政書士もぐもぐ......自分流情報発信  第2号
                           平成15年6月7日発行 
            今回の目次
        □ 日本の戸籍制度って特殊なの?
        □ 改製原戸籍って何だろう?


  □ 日本の戸籍制度って特殊なの?

  前回では、現在の戸籍制度を批判する人々がいるってことや、
 それと家系図を作ることとは、次元か゜違うのですということを書きました。
 
  そもそも戸籍というものがなかったとしたら、
 家系図はどうやって作るのだろうと、思ってしまいます。
  遺産相続にしても、家族関係にしても、国籍関係にしても、
 その実務は、戸籍制度の上に成り立っています。

  戸籍謄本等を入手さえすれは゛、実務は非常に迅速に進んで行きます。
 その意味では、こんな便利な制度もないのではと、私は思うのです・・・・・・。
 
  最近知った話ですが、この戸籍制度がある国というのが、
 日本、韓国、台湾だけなのだそうです。いや、これは全く意外でした。
 戸籍制度もまた、明治になって輸入したヨーロッパの制度なのだろうという、
 勝手な思い込みがあったのです。
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  じゃ、ヨーロッパでは、結婚しても届出はしないのだろうか・・・・・・。
  
  入管関係手続きの実務研修を受けていて、ヨーロッパ事情が少し分かって来ました。
 教会が市役所のような役目を、果たしているというのです。
 挙式した祖国の教会で婚姻証明書を作成してもらい、
 原本を大事に持って来て、在留資格審査の資料として入管に提出するそうです。

  もっとも、届出を全然しないというわけではありません。
 出生、結婚、死亡といった事件別の登録や、個人単位とか家族単位の登録は、
 あるようです。
  しかし、それも身分関係を公証するものではなく、
 その点で日本の戸籍とは、大きく違っているのです。
 
  なぜ、ヨーロッパはそうなのだろうか。
 多分、歴史的・思想的な背景が裏にあるんでしょう・・・・・・。
 身分関係といった至極個人的な情報は、国家に握らせるべきではないとかいった・・・・。
  これは、私の推測です。

  ヨーロッパで探偵社が活発な理由も、なんとなく想像出来るというものです。
 つまり、ヨーロッパには戸籍という便利なものがないから、結局身分関係を調べるにも、
 探偵社に高額の報酬を支払って依頼するしか方法がないのです。

  相続人の確定など、日本なら戸籍・除籍謄本・原戸籍などを取れば直ぐ出来てしまうのに、
 ヨーロッパではやっぱり、探偵社にいちいち頼むのだろうかと思ってしまいます。
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  結局、戸籍制度って便利な制度だと、私は思います。
  「日本の常識は、世界の非常識」なんてよく聞きますが、
 現在の戸籍制度も果たして、本当にそうなのでしょうか・・・・・。
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  少し、歴史的なことに触れます。
 戸籍制度が出来たのは、憲法や民法なんかよりずっと早いのです。
 1871年に、もう出来ています。
  これが、有名な壬申( じんしん)戸籍です。

  今と違い戸主中心の戸籍で、やがて旧民法が出来ると、
 「家」制度の根幹を成しました。
   富国強兵を急ぐ明治政府にとって、戸籍制度は有難い制度だったと思います。
 徴兵や徴税や義務教育に必要な国民の情報を、
 これで略完璧に把握出来たのですから。

  しかし、この壬申戸籍には、戦後になって大問題となる記載がありました。
 「エタ」(被差別部落出身)という、身分差別の記載があつたのです。
 
  壬申戸籍は、戦後も除籍・原戸籍として役所に保管されていましたが、
 1970年4月から遂に永久封印となりました。各役所で一斉にダンボールに詰められ、
 法務局の倉庫に送られたのです。
  そして、今でも歴史家が歴史資料として見たいと請求しても、許可しないそうです。
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  現在の戸籍制度は、この壬申戸籍と比べると似て非なるものです。
 筆頭者も本籍もただのインデックスですし、出生地の記載も市区町村までです。
 編成も「家」単位から、夫婦と子の二代までになりました。
  除籍・原戸籍の差別記載は、すべて塗抹されています。
 
  個人情報の保護という観点でも、戸籍・除籍簿の閲覧は何人も禁止ですし、
 謄本・抄本の請求も本人か直系に制限しています。
 戸籍の個人情報が、差別その他に利用されないよう窓口で、
 厳しいガードを掛けているのです。

  戸籍制度は、情報が漏れたり、悪用されたりしなければ、
 市民の側から見ても、身分関係を容易に公証できる便利な制度だと思います。
 しかし、ウーマンリブ系のフェミニス゛ムの人達は、
 まだ内縁の妻や婚外子を差別しているといいます。
  そして、戸籍制度を差別の根源のようにいいます。

  では、戸籍制度の廃止すれば、それで解消されるのでしょうか・・・・。
 国会にはかなり前から、民法改正の動きがあります。
 婚外子の差別撤廃や夫婦別姓を視野に入れています。

  相続権のない内縁の妻についていえば、遺言で遺産分けも可能です。
 そおいう社会的弱者を少しでも救済しようというのが、世の流れですから、
 時間が解決してくれるはずです。
  そして、戸籍の利用についても公証関係のみに厳しく制限して行くことで、
 かなり差別的利用の機会を阻止できるのではないて゜しょうか・・・・・。
  結局、戸籍制度を一方的に悪と決め付けて廃止せよという考えには、
 少し暴論のきらいがあると私は思うのですが・・・・・。



 

  □ 改製原戸籍って何だろう?

  最後に、改製原戸籍について少し述べます。
 まず、改製原戸籍は、「かいせいげんこせき」と読みます。
 実に聞き慣れぬ、「それって何?」と、思わず声を発したくなる名前です。
 
  古い戸籍なのだろうという印象が先立ちますが、
 実は平成になっからも、発生しているのです。
  現在、戸籍の電算化が進められています。
 この電算化されて横書きに改製された戸籍に対して、
 従前の縦書きの戸籍を、「平成改製原戸籍」と呼んでいます。
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  この改製原戸籍ってそんなに使うことあるの・・・・・???
 それが結構あるのです。
 家系図の作成ではなくてはならぬものですし、
 相続人の確定や遺産の名義変更などで必要になるのが、これなのです。

  平成以前では、昭和22年に大きな改製がありました。
 この改製前の戸籍を、「昭和改製原戸籍」といいます。
 普通、我々がお世話になるのが、この原戸籍です。

  「昭和改製原戸籍」は、旧民法下で編成された戸籍ですから、
 戸主を中心に、「家」に帰属する家族が孫や姪までずらっと載っています。
  この戸籍には便利な面があります。
 この戸籍ひとつで、相続人の確定が済んでしまうところがあるからです。
 また不動産の変更登記申請では、「昭和改製原戸籍」が不可欠な書類です。
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  ただし、改製後の戸籍には、改製時に死亡していた人や除籍になった人は、
 記載されません。
  平成の改製後の戸籍でいえば、死亡、婚姻、転籍などで除籍になった人は
 載っていません。その人達の身分関係を公証するには、「平成改製原戸籍」を
 取る必要があるわけです。

  要するに、改製があると現在の戸籍から落ちてしまう人もいるので、
 改製原戸籍を取って、それを補完しなければならないのです。

  なお、昭和22年の改製作業は、実際に昭和33年から40年頃に渡って
 実施されましたので、市区町村でかなりのバラツキがあります。
  ですから、戸籍が何時改製されたかは、戸籍を取って見ないと
 分かりません。

  はっきり言えることは、その時期をまたがって生きていた人がなくなったら、
 「昭和改製原戸籍」を取る必要があるということです。
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  今回は、戸籍制度の光と影の部分や歴史的変遷について、
 自分流に整理して見ました。





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