行政書士もぐもぐ......自分流情報発信  第3号
                           平成15年6月16日発行 

            今回の目次
        □ 戸籍をめぐる雑学散歩
        □ 家系図と先祖信仰


   □ 戸籍をめぐる雑学散歩

  前回、普段眠っているような戸籍制度にも、日本的特殊性や
 歴史的変遷があるってことに触れました。
  今回は、一般市民の目線から眺めた戸籍をめぐる風景を、
 雑学風に散歩して見ます。
                       ж

  戸籍情報の流出や戸籍の差別的利用とか、戸籍の偽造には、
 国もさすがに神経質になっているようです。
  今、戸籍の電算化が市区町村単位で進められていますが、
 電算後は、何と戸籍という言葉をもう使用しないんだそうです。

  戸籍謄本を、「全部事項証明」、戸籍抄本を「一部事項証明」と
 呼ぶことになっています。
 中味は今までと全く変わりありませんが、戸籍という名称を止めた辺りに、
 苦悩が透けて見えて来るではありませんか・・・・・。
                       ж

  前回にも述べましたように戸籍制度は、とても便利で合理的な制度です。
 これひとつで、身分関係の公証から、結婚・離婚の届出受理、パスポートの発行、
 名義変更の手続きまで、非常に簡単に済んでしまうのですから。

  それは一般市民の側から見てもいえることで、そおいった手続きが
 戸籍謄本1本で難なく片付いてしまうので、
 逆に戸籍への関心が薄れて行ってしまいます。

  しかし、便利な制度である一方、それがあることで差別感・嫌悪感に苦しむ
 社会的弱者がおられることも事実です。
  そこに、国としてもジレンマがあるのでしょう。
  
  国は、戸籍情報の流出や差別的利用の阻止という点でいうと、
 請求の窓口のガードを高くして対応しています。

  請求できるのは、原則的に配偶者、本人、本人の直系のみです。
 親族に行方不明者がいて、直系以外の親族が戸籍の附票で探そうとしても、
 窓口でナンタラカンタラ言われて、応じてくれないそうです。
  昔と比べると、随分厳しくなっているなと私は思います。
                      ж

  さて、「戸籍の附票」というのは、本籍地の役所が管理しているもので、
 直近の住所までずらっと移動した住所が載っています。
  住民票がないと生活に困る場合がありますから、移転届はいつか出します。
 それを出すと、その役所から本籍地の役所に通知が来て、
 「戸籍の附票」に新住所が記載されるわけです。

  債権者が、逃げる債務者を追跡するのにとても便利な制度です。
 消費者金融会社が、焦付き債権を2、3年寝かせた後に再び
 請求し始める時も、この「戸籍の附票」を利用しているのです。

  第三者が「戸籍の附票」を請求するには、正当な理由が必要ですが、
 契約書写しを添付して、債権の存在を疎明されれば、
 役所としても、請求を拒否出来ないのです。
  一般市民にとってあまり馴染みのない「戸籍の附票」ですが、
 案外一番活用されていたのは、債権回収の場面だったのかもしれません。
                       ж

  さて、一般市民に最も馴染みのあるものといえば、住民票です。
 これも、住所の証明になりますが、難点は前住所、現住所、移転先の
 3つの住所しか記載されないことです。
  次の次の移転先を知るには、
 もう「戸籍の附票」を請求するしか方法がありません。

  住民票のミソは、本籍と筆頭者の記載があることです。
 「自分の本籍はどこだったけ?」と忘れている人が、5割くらいいるそうです。
 本籍を知りたければ、まず住民票を取ればいいわけです。
  本籍というのは、日常ほとんど使い道がないのですから、
 忘れても不思議ではありません。
                       ж
  実際、本籍と筆頭者はインデックスの役目しか担っていません。
 多数の戸籍の中から、本人の戸籍を素早く探し出す為に使うものです。

  ですから、本籍の変更=転籍も自由に出来ます。
 本籍地が遠方にあって請求に不便だと思ったら、
 今の住所に変更すればいいのです。
  転籍すると、前の戸籍はすっかり空になりますから、当然 除籍簿となります。
 転籍があると、相続の際に戸籍謄本等の請求事務がやや煩瑣になるのが、
 難点といえば難点です。
                       ж
  それから、筆頭者というのも変わった扱いがされます。
 筆頭者が死亡しても、配偶者や子に変更されることはありません。
 住民票の世帯主というのは、主に世帯の生計を維持する者ですから、
 死亡すれば当然変わりますし、生前でも変更が出来ます。

  しかし、筆頭者の場合ですと、インデックスですから、
 死亡後もそのままの方が好都合なのです。
 
  もっとも、筆頭者が死亡した旨の記載はされます。
 ですから、筆頭者が死亡すれば除籍になりますが、
 戸籍が直ちに除籍簿になるわけではありません。

  戸籍にまだ他の家族がいれば、戸籍もそのままです。
 全員が除籍になって初めて除籍簿となります。
  
  除籍簿が出たついでにいいますと、改製原戸籍も除籍簿です。
  また、改製があると従前の附票も除籍簿となり、
 それは改製原戸籍附票といいます。
                    ж
 ※ なお、戸籍実務に関しては、次のHPを参照致しました。
         下市民課職員の危ない話





 □ 家系図と先祖信仰
   
  日本人には、ご先祖様が子孫を見守ってくださるという
 自然な信仰があると、前に書きました。

  それは仏教の葬儀や行事と合体して、日本人の文化そのものになってます。
 最先端を行く科学者でも、親がなくなれば、
 その家の宗派の流儀により法事を執り行うでしょう。

  今でも8月のお盆は、最大の国民的行事です。
 多くの日本人は、田舎に帰って墓参りをし、
 一族が一堂に集まって先祖供養をします。
  
  それは日本人の皮膚感覚のようになっていて、
 田舎の山や川のように、あって当り前のことになっています。
  逆に、「お盆って何?」などと、改めて考えたりしません。
                      ж

  実をいうと、この先祖崇拝は、仏教から来たものではないそうです。
 そういえば、仏教では、空とか無とか悟りとか仏とかいいます。
 ご先祖様を崇めるのとは、何となく違う感じがします。
 空とか無とかを説教されても、昔の人は難しくて分からなかったでしょう。
 今の人でも、分かる人は多くありません。

  日本人には、このご先祖様の方がびったり合っていたのです。
 自然発生的にあったこの信仰が一般に定着したのは、
 室町中期た゜そうです。

  人がなくなるとホトケになるといいますが、このホトケを三十三回忌まで弔うと
 やっとご先祖様になられるのだそうです。
  これは物語です。
 このご先祖様が故郷帰って来られて、子孫と共に交歓の時を過ごす・・・
 それがお盆なのです。
                       ж
  日本人は、ご先祖様を神のように崇め、先祖供養を怠らなければ、
 人の道から外れず幸福に暮らせると信じて来たのです。

  仏教のような深遠な思想ではなくても、
 これも立派な自然信仰だと私は思います。
                       ж

  さて私は、家系図をこの先祖信仰とこじつけるつもりはありません。
 この先祖信仰を信じても信じなくても、家系図を作る意味はあります。
 ただ、自分が今日あるは先祖のお陰であり、
 それ故に先祖を敬うという自然な気持ちでは、共通していると思います。
 
  その気持ちは、自分の育った家が名家であろうと名もない家であろうと、
 全く差はないはずです。
  家系図は、先祖の生きざまを子孫に伝えるために作るものです。

  家柄がどうのといったことは、大した問題ではありません。
 遺伝子レベルでずっと遡って行くと、人類は皆共通の先祖に辿り着くそうです。
  日本人も元を辿れば、皆同じ血縁なのです。
 そんな宇宙的、歴史的な空間の中で、
 家系図も眺めるべきものと私は思っています。
 
  ※ なお、先祖信仰については、次の講演録を参考に致しました。
      梶田 真章 法然院貫主 「あの世はあるのか、ないのか」





 発行者 : 行政書士 田中 明 事務所
         〒239-0822  神奈川県横須賀市浦賀町5丁目50番地211    
                   TEL・FAX   046-843-6976
    マガジン説明用Webページ : http://lantana.parfe.jp/melmagagin.html
    ホームページ・トップ :  http://lantana.parfe.jp/   

-------------------------------------------------------------------
  このメールマガジンは、『まぐまぐ』 http://www.mag2.com/ を利用して発行
 しています。解除は http://www.mag2.com/m/0000110319.htm からできます。

-------------------------------------------------------------------