インターネット行政書士のフロンティア戦略 第 177号   
                令和5年2月10日発行 
      
民事法務のフロンティアに鉱脈を目差すインターネット行政書士のマインドと戦略。

                  今回の目次
         □
 認知症の高齢者は訴訟を提起できるか


  訴訟を提起するには訴訟能力が必要ですが、認知症に罹患すると判断力が段々
低下して行きますから、認知症が中程度以上になれば訴訟能力もないとされます。

  また、高齢者の認知症の程度が重くなった場合、銀行は本人の預金口座を閉鎖
するので本人はもとより親族でも本人の預金口座から下せなくなります。

  これは家族にとって一番困ることなので、判断力がまだある内に親族を任意後見
人に指定する任意後見契約を締結して置くのがお勧めです。

  これは公証役場に本人と行って「委任契約兼任意後見契約
公正証書」を作成す
れば、今から親の財産管理や見守り等が開始出来るという大変使い勝手のいい契
約で、任意後見受任者(親族)はこの公正証書を提示して本人の口座から現金を下
ろすことも出来ます。

  
  さて、成年後見制度についてですが、任意後見制度に比べて使い勝手が悪いと
いう評判が高まっており、あと数年で改正されると思われます。

  しかし、現在、 認知症が進んでしまっている場合、この制度を使わざるを得ない
ので、訴訟との関係をを整理します。

  まず、成年後見の申立が家裁になされますと、家裁では判断力の低下の程度に
応じて、成年被後見人、被保佐人、被補助人のいずれかに分類し、それぞれに
成年後見人、保佐人、補助人を家裁の登録名簿から指名します。

 指名される人は、弁護士、司法書士、社会福祉士、行政書士、親族などで、
現在は弁護士の割合が高く、親族は申請しても中々なれない状態です。



 1 成年被後見人

    成年被後見人は判断力の低下が酷く、意思能力も訴訟能力もないとされて
  おりますから、法定代理人つまり成年後見人によらなけれぱ訴訟行為は出来
  ません (民事訴訟法第31条)。

    成年後見人は、本人が植物人間であっても少なくとも財産上のことに関して
  は単独で本人の為に単独で示談交渉や訴訟行為が出来ます。


 2 被保佐人

     被保佐人は基本的に訴訟行為が出来ます。 
   しかし、被保佐人に重大な結果を招来する行為(同意の範囲に包含されて
   いるとは必ずしもいえない一定の行為
、和解や控訴など)についてはそ
   の行為ごとに
保佐人の個別的な同意が必要
になります
                          (民事訴訟法32条2項)。

     もちろん、弁護士の保佐人に訴訟委任状(本人の署名と押印が必要)を
   交付して依頼することが出来ます。

     逆に、被保佐人は相手方提起の訴え、又は上訴に係る訴訟行為をする
   のに保佐人の同意は不要です


 3  被補助人

     被補助人は、家裁の審判で被補助人が訴訟行為を行うには補助人の
   同意が必要であるとされている場合、補助人の同意なしに訴訟行為が出
   来ません(民事訴訟法28条、民法17条1項)。 






     それ以外では、
    被補助人は基本的に補助人の同意なしに訴訟行為を行うことが出来ます。


     また、被補助人は相手方提起の訴え、又は上訴に係る訴訟行為をする
    のに補助人の同意は不要ですし、
     逆に、被補助人が和解や控訴等を行うには補助人の同意は不要です
                              (民事訴訟法32条)。 


 4  訴訟委任状の問題

    成年後見人は単独で訴訟行為が出来ますが、保佐人や補助人の弁護士に
  委任する場合は訴訟委任状(本人の自署と印鑑がある)の交付が必要です。
 
    また、家裁の審判を受けていない認知症の人が弁護士に訴訟委任した場合、
  委任状の署名が本人の直筆でなかったり、被告が本人の判断能力に疑問を
  抱いた場合などに意思能力の欠如を被告から主張されることがあります。

    追って選任された成年後見人が追認すれば、訴訟代理権が認められますが、
  追認してくれる保証もない場合、裁判所に「訴訟委任状に公証人等の認証を受
  けるよう命ずること」(民事訴訟規則第23条2項)を求めるか、又は却下判決を求
  めることになります。



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