行政書士もぐもぐ......自分流情報発信  第31号
             平成17年6月24日発行 

            今回の目次
        □ 「売却代金を遺贈する」なら・・・まず相続登記。
        □ 商行為について



   □ 「売却代金を遺贈する」なら・・・まず相続登記。

  遺言執行者の実務を代行していて、
「へぇ・・・そうなの・・・・ ホッホッホ・・・!」と思ったことがあります。

 公正証書遺言で、「マンションを売却し、
諸経費を控除した代金をAに遺贈する」という表現になっていました。
売却の権限は、遺言執行者にあります。

 さて、もし遺言書の表現が、単に「Aにマンションを遺贈する」となっていれば、
遺贈登記をすれば、それで遺言執行者の任務は完了となります。
しかし、遺贈するのはマンションそのものではなく、売却代金なのです。
実務が回りくどくならなければいいが・・・・・。
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 やっぱりその予感は、的中しました。
司法書士の説明では、こうでした。
「法定相続人全員の相続登記をし、それから買主に所有権移転登記をします。
それで法定相続人全員の戸籍謄本、住民票を集めて下さい」

 法定相続人は11名もいましたから、
この収集が煩瑣だったことは謂うまでもありません。
それにしても、なぜこんな遺言書にしたのか・・・・・。
                    
 結局、売却代金を遺贈した方が受遺者は喜ぶだろうというに過ぎません。
受遺者の便宜を図ることはいいとして、だからと言ってこんな煩瑣で
回りくどい遺言執行者泣かせのやり方が本当にベターなのでしょうか・・・・・。
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 次に、相続登記 → 所有権移転登記という登記の流れが、
また面白いのである。
 こおいう登記になることは、昭和45年10.5民事局長回答にあり、
法務局もこれで運用していることは間違いないのです。

 こんな登記にする理由は、中間省略登記の禁止にあります。
つまり、所有権移転の実体をそのまま登記にも反映させようというわけです。
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 さて、相続登記申請では、遺言執行者が関与しません。
相続登記というのは法定相続人が単独申請出来るものなので、
法定相続人の誰か一人から委任状を貰えば、
誰でも代理人として申請することが出来ます。

 そして、買主の所有権移転登記の時に、
遺言執行者は法定相続人の代理人としてやっと登場して来るに過ぎません。
所有権移転登記申請では、遺言執行者と買主が共同申請します。
 因みに遺贈登記では、遺言執行者と受遺者の共同申請になります。
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 こんな迂遠とも思える二段階の登記をすることに、
一部の司法書士などが批判していることも事実です。
 たとえば税金の問題があります。

 法定相続人に不動産譲渡所得税が掛かるのではないかとか、
受遺者に贈与税が掛からないのかという問題です。
                 
 この不動産移転のそもそもの原因は、遺贈なのです。
しかし、「代金を遺贈する」となっている為に、やむを得ずまず相続登記をして、
それから移転登記をするという流れにしているだけなのである。
                   
 法定相続人は登記上に一端現れるとしても、
現実に譲渡益を享受するわけでもない。
また受遺者は本来が相続税の対象となるのだから、
贈与税は対象外となるはずである。

 だから、登記の流れがそうだからと言って、
実質は遺贈である以上、そんな課税を考えることは空論ではないのか・・・・。

 もっとも、税務署によれば、後者は値上がりしていた場合掛かるが、
前者は掛からないとのことですが・・・・。
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 結局、本案件は結構奥の深い問題を孕んでいるのです。
事の始まりは、公正証書遺言の「代金を遺贈する」という表現にあります。

 私個人の意見としては、極力この表現は避けるべきと考えます。
どうしても避けられないというのであれば、
もっと簡略で合理的な登記実務に改善されるべきです。

 例えば、中間省略登記の禁止の例外として、
遺言執行者による遺贈登記とするとか、
又は相続登記なしでの所有権移転登記を認めるべきでしょう。

 そもそも中間者として現れては消えていく法定相続人には、
登記により保護すべき実益は何もないのですから。


    □ 商行為について

 本を読んで見てもよく分からないものに、商行為があります。
その上、商行為に直面する機会というのが余りありません。

 ただ、特定商取引法や割賦販売法に、
クーリング・オフや支払停止の抗弁は商行為に適用しないとあります。
これが法文で出会う唯一の箇所と言ってよいでしょう。

 商行為そのものが今ひとつ不透明な概念であることもあって、
悪徳業者の中には商行為を主張して、
クーリング・オフや支払停止の抗弁から逃れようとする者がいます。
                
 ですから、彼らに対抗する為にも、
商行為について深く知る必要はあるのです。
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 さて、歯科医院が節電機を購入した場合、これは商行為になるでしょうか。
まず歯科医は、商人ではないとされます。

 また、商法第502条の相対的商行為にはあたりませんし、
商法503条の商人の営業を補助する行為でもありません。

 結局、歯科医師が節電機を購入することは、
他の治療機器を購入するのと同じく商行為ではないのです。
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 ですから、クレジット契約書に「商行為の為支払停止の抗弁の適用が
ありません」などという記載があったとしても、
一律に適用されるというものではないのです。

 もし、購入者がコンビニ店主であった場合は、商人です。
また小売業は、売買ですから絶対的商行為です
 よって、節電機の購入は商人の営業を補助する行為として、
商行為となるはずです。

 商行為というのは、
やっぱり事例に即して考えて見るのが一番理解し易いようです。

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