トップ > <消費者と個人を支援するサイト >   敷金をこうやって取戻せ!    サイトマップ

           敷金はこうやって取戻せ!
     
明渡時の原状回復、自然損耗、修繕費、通常の使用、返還請求、判例

 
重要判例の判決理由抜粋

平成16年3月16日京都地裁判決
    <争点>  原状回復特約は消費者契約法第10条により無効か否か


「   賃借人は賃貸借契約の締結に当って、明渡し時に負担しなければならない自然損耗等による原状
 回復費用を予想することは困難であり、この点において賃借人は賃貸借契約締結の意思決定に当っ
 て十分な情報を有していないといえる。

   これに対して、賃貸人は将来の自然損耗等による原状回復費用を予想することは可能である
 から、これを賃料に含めて賃料額を決定し、或いは賃貸借契約締結時に賃貸期間に応じて定額の原
 状回復費用を定め、その負担を契約条件とすることは可能であり、またこのような方法をとることによ
 って、賃借人は原状回復費用の高い安いを賃貸借契約締結の判断材料とすることができる。

   以上の点を総合考慮すれば、
自然損耗等による原状回復費用を賃借人に負担させることは
 契約締結に当たっての情報力及び交渉力に劣る賃借人の利益を一
方的に害するものいえる。   
   ゆえに本件原状回復特約は消費者契約法第10条に
より無効である
と解するのが相当である」

平成16年12月17日大阪高裁判決
   
 →平成16年3月16日京都地裁判決の控訴審判決です。

「  本件原状回復特約は賃借人の二重負担の問題が生じ、また賃貸人が一方的に必要性を認めるこ
 とができるなど、賃借人に一方的に不利益であり、信義則にも反する。  
自然損耗についての原状
 回復義務負担の合意は、賃借人に必要な情報が与えられず、自己に不利益であることが認識
 できないままされたものであって、一方的に不利益であり、信義則にも反する
。    
   また、民法の任意規定の適用による場合に比して、賃借人の義務を加重し、信義則に反して賃借
 人の利益を一方的に害しており、消
費者契約法第10条に該当し、無効である


 平成17年12月16日最高裁判決    
    
<争点>  通常損耗補修特約の有効性

「 賃借人は賃貸借契約が終了した場合には、賃借物件を原状に回復して賃貸人に返還する義
 務があるところ、賃貸借契約は賃借人による賃借物件の使用とその対価としての賃料の支払
 を内容とするものであり、賃借物件の損耗の発生は賃貸借という契約の本質上当然に予定さ
 れているものである。 
  
  それゆえ、建物の賃貸借においては賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる
 賃借物件の劣化又は価値の減少を意味する通常損耗に係る投下資本の減価の回収は、通常、
 減価償却費や修繕費等の必
要経費分を賃料の中に含ませてその支払を受けることにより行わ
 れている。
  
  そうすると、建物の賃借人はその賃貸借において生ずる通常損耗についての原状回復義務
 を負わせることは予期しない特別の負担を課すことになるから、賃借人に同義務が認められ
 るためには少なくとも賃借人が修繕費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契
 約書の条項自
体に具体的に明記されているか仮に賃貸借契約書では明らかでない場
 合には賃貸人が口頭により説明し、賃借人がその旨を明確に認識しそれ
を合意の内容
 としたものと認められるなどその旨の特約が明確に合意
されていることが必要である
 と解するのが相当である」


 ※ 通常損耗分の修繕費は貸主負担であるが、借主負担に変更する特約は明確に規定されていないと有効に
   ならないとするものであり、「不明瞭な条項は作成者に不利に取る」という原則を認めたものである。

 
※ 本件は消費者契約法施行前の事例です。   消費者契約法施行後の最高裁判決はまだありません。




平成12年12月27日東京高裁判決
  争点  オフィスビルの原状回復義務の範囲

「  賃借人の入居期間は賃貸人に予測することとは困難であるため、適正な原状回復費用をあらか
 じめ賃料に含めて徴収することは現実的には不可能であり、
賃借人が退去する際に賃借時に
 同等の状態まで原状回復させる義務を負わせる旨の特約を定めることは、経済的にも合理
 性がある
。  
   建設省の賃貸住宅標準契約書は、賃借人は通常損耗を除き原状回復しなければならない旨規
 定しているが、この条項は居住者である賃借人の保護を目的とするものである」



             ご相談のメールは     





               行政書士田中 明事務所