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                   内容証明郵便でブレイク !        行政書士田中 明事務所

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                悪徳商法に絶対負けない消費者になる方法


    自ら権利行使する者のみが救済される

  巧みな勧誘に乗せられて契約書につい署名したが、後でゆっくり考えて見ると、「要らない
物を買わされてしまった。解約を申入れたが、応じてくれない」と思い悩んでいる人が、
どれ程多いことでしょう。               
  世の中には、クーリング・オフは別として、契約の解除は難しいという常識が罷り通って
います。 消費生活センターのパンフレットを見ると、大抵次のように書かれています。
「契約すると当事者に拘束力が働きます。互いに契約内容を履行する義務が生じ、自己都合
で勝手に解除することは出来ません。 ただし、例外的に契約の拘束力が解かれる場合として、
法定解除、約定解除、合意解除があります」

  この記述は決して間違いではないのですが、何とも教科書的記述で、実務の現場の匂いを
感じさせません。 消費者が解約に関し苦情を申立てる場合というのは、業者の勧誘が
不適正だったり、業者の情報提供義務が不十分だったり、情報・交渉力の格差が是正され
ないまま契約させられたという場合が多いのです。 もし、そのまま契約の拘束力を維持させ
たら、「取引の公正」や「消費者の損害防止」に反するという場合が多いのです。
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  私の事務所にメールで相談して来る事案も、そのような契約の拘束力から離脱させて
然るべき事案がほとんどです。 そして、大抵は初期段階、つまり契約はしたが、まだ履行前
なので解約出来ないかというものです。 色々事情を窺って見ますと、やっぱり業者は
情報提供義務を果たしていないのです。 消費者の情報・交渉力の足りなさに付け込んで、
強引に契約させているのです。

  一昔前だったら、契約した以上はもう諦めるしかないと観念するところでしょう。 しかし、
今は消費者契約法があり、事業者に情報提供義務を負わせ、「不実の告知」「故意の
不利益事実の不告知」などで 消費者が誤認した場合、取消が出来るとしています。
 消費者契約法は民法の特別法であり、詐欺や錯誤に至らなくても契約の解消を認める
画期的な法律なのです。 消費者契約法を適用した判例は、今蓄積されつつあります。

  最近、パチスロ攻略法という射幸性の強いややマニアックな事案にも適用して取消を
認めました。 「誰でも出来、100%確実に当る」という業者の常套句が断定的判断の提供に
当たると認定しました。 要するに、パチスロ攻略法というのは虚偽の情報なのであり、
業者はそうと分かって販売していたのであり、購入者は虚偽の情報ではないと誤信して
買った以上は消費者契約法により保護されて然るべきとされたのです。
 判例の詳細は、下記です。
 http://www.hyogoben.or.jp/hanrei/pdf/070129-n.pdf
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  契約の解消は、何も消費者契約法だけがすべてではありません。
私は何を言いたいのかといいますと、これまで有力な学説や判例で取り上げられて来た
法理も活用して見よということなのです。
  例えば、実際の表示と消費者の食違いが大きい場合、当事者に意思表示の合致が
なかったとして、契約を不成立とする法理があります。 この法理は、消費者の真意を
重視します。 一般的には、外部に現れた表示で一致があれば、つまり契約書にサインが
あれば、契約が成立しているとされます。
  しかし、消費者の真意がこれと大きく食違っていて、しかも業者がそのことを認識出来た
という場合、この法理は意思表示の合致を否定するのです。 もちろん、 表示と真意の
食違いが、業者のトークや勧誘行為或は不実告知によって生じたものであることは、
当然の前提とされます。
                    
  次に「契約締結上の過失に基づく解除」の法理というのがあります。
この法理は、これから契約を締結しようという業者は、消費者が不測の損害を蒙らないよう
配慮する義務を信義則上負っているとし、この義務違反がなければ消費者は契約しなかっ
たでろうと認められる場合、消費者は契約を解除出来るとします。
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  これらの法理は、判例で確立されたわけではありません。 しかし、主張することは一向に
構わないのであり、主張することによって合意解除の道も開けて来ます。
  要は、「この契約は不本意だ、解除出来て当然だ」と思ったら、解除する理由を懇懇と
真剣に業者に説くことではないか・・・・。 その際の合理的な理由付けを、これらの法理は
提供していると、私は考えるのです。  
             
  自ら権利行使して、初めて救済されるのです。もう駄目かと諦めていたり、
泣寝入りしていたら、法は絶対保護してくれません。




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