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                   内容証明郵便でブレイク !        行政書士田中 明事務所

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                <悪徳商法に絶対負けない消費者になる方法>


    シルクスクリーン絵画商法は暴利行為

 シルクスクリーン絵画というのは一種の版画ですから、刷ろうと思えば何枚でも刷れます。
如何に有名な作家の作品であろうとも、1枚の版画が100万円というのは高すぎます。
こんな商法が許されるとしたら、世の中は少し変だと思っていたら、そんなモヤモヤを一蹴する
判例を見付けました。
                 
 こんな売買契約は、商道徳を逸脱した違法なもので公序良俗に反し無効と判断し、
被害者にクレジットの支払停止の抗弁を認める判決を下していました。
    (青森地方裁判所十和田支部平成13年12月27日判決)
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 この判決の最大のポイントは、シルクスクリーン絵画販売の暴利性を認定したことです。
その判決理由を、以下で整理して見ます。

 Y 消費者   A 絵画販売業者   B Aの従業員  C Xの従業員
 X クレジット会社
 ・ Yは、大手スーパーの店舗内の個室において、シルクスクリーン絵画1点を
  82万9千円、クレジット総額113万1750円(月額1万8千円の分割)で購入した。

 ・ シルクスクリーンの流通価格は14万6千円程度なのに、売買価格を82万9千円と
  するのは、暴利行為である。
 ・ 本件絵画の作者は多作で、作品によっては300枚程度の原画が存在することが窺え、
  限定版とか極めて少数の原画しか存在しない事実は窺われない
 ・ 実際のクレジット支払月額は1万5千円なのに、Bが社員割引を適用するから 1万円
  程度になると勧誘したのは、Yに重大な誤解を生じさせかねない極めて不相当な方法に
  よる勧誘である。
 ・ 割賦販売法は過剰与信の防止に努めるよう求めているのに、CはYの年収を確認した
  のみで、その支払能力を確認した形跡はなく、Bに対してYの支払能力を確認した
  形跡もない。

 これらを総合して、本件売買契約は公序良俗に反し無効とし、Xの支払請求を拒否して
いるのです。  
                        
 判決は個別案件毎に下されるので、全ての契約がこうなるとはいえません。 しかし、非常に
意味の大きい判断がそこにはあります。 つまり、シルクスクリーン絵画を82万円で販売する
ことは、暴利行為として無効だということです。 裁判所はこの強引な絵画展示会商法を、
全面否定したのです。
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  実はシルクスクリーン絵画販売の場合、クーリングオフの適用が微妙なのです。
シルクスクリーン絵画販売の現場は、普通このようなものです。
 『 20歳のA君は、駅前で絵画展の特別招待券をもらい、近くの展示会場へ行った。中に
 入ると販売員が付きっ切りになり、あるシルクスクリーンの絵を指すと、「この絵とはもう会う
 ことはない」 「この絵は値上がりするから、後ではこの値段では買えない」などと、3時間位
 勧誘され、「帰りたい」と言ったが、契約しないと帰れそうにない雰囲気だったので、クレジットで
 合計100万円になる絵を買った。 A君は 帰宅してから、やっぱり高すぎるので、解約したい
 と思っている。 』
                

 ・契約した場所の展示会場は、売る目的の絵を一定期間展示して販売している場合は、
 「営業所等」に該当します。
 ・「営業所等」で契約しているのですから、特定の誘引方法による販売(キャッチセールス
 やアポイントメントセールス)
に当たれば、 クーリング・オフが使える特定商取引法上の
 「訪問販売」となります。
 ・A君は、駅前で偶然貰った特別招待券を見て、展示会場へ誘引されています。    
                       
  ポイントは、絵の販売意図を明らかにしているか、又はA君がそれを認識し得たか
 である。


 ・販売意図を隠している場合は、アポイントメントセールスになります。特別招待券に絵の
 展示販売の記載
があれば、該当しませんが、あっても字が小さくて到底一般の消費者
 が認識出来ないようなのなら、該当します

                  
 実際には、特別招待券に絵の展示販売の記載をしていることが多いと思います。

 そうなると、A君はクーリング・オフが使えないことになります。 ただし、A君は勧誘がしつこく
て、帰れない程に困惑しているので、 消費者契約法で取消が出来る可能性は残ります。
                 
 もっとも、展示場がマンションやビルの一室で消費者の自由な出入りが出来ない
場所であったり、展示会が1日で終わるものであったら、
その展示場は「営業所等」に
該当しません
から、「営業所等」以外の場所で契約した通常の訪問販売となり、クーリング・
オフが出来ることになります。
                 
 先の判例は、このようにクーリングオフや消費者契約法による取消が微妙であるケースの
場合でも、契約解消の道を拓いてくれたという意味で大きな意義があるのです。




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