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                   内容証明郵便でブレイク !        行政書士田中 明事務所

                   
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                <悪徳商法に絶対負けない消費者になる方法>

   債務不履行で損害賠償が出来る場合

  民法に拠れば不法行為と債務不履行の場合に損害賠償責任が発生します。 不法行為の
場合なら交通事故を始め詳細な蓄積があります。 しかし、債務不履行の場合になると、やや
実例に乏しいようです。 例えば、アメリカでのインターンシップ研修のプログラムに90万円払い
込んで、渡航日も決まり、ビザの取得待ちのところ、主催会社の不手際でビザが不許可になっ
て渡航日を過ぎてしまったというケースの場合はどうでしょうか。

  この場合は、主催者はビザの取得代行を引き受けているので、善管注意義務違反があった
として不法行為も成立するでしょう。 もちろん、委任契約の債務不履行による解除も出来るで
しょう。 委任の解除は普通、解約告知といって遡及効がないのですが、このケースの場合は
一般の解除が適用され初めに溯って無効になる場合です。                   
  さて、損害賠償の範囲は、債務不履行と相当因果関係のある範囲とされます。 支払代金は
当然の損害として、渡航出来なくなったことによる損害はどこまで請求出来るかです。 相談者
は渡航の準備として、会社を退職し、車も売却していました。  しかし、これらが不意味になった
としても、損害額となるとはっきり決められないのです。 このような場合は、慰謝料として50万
円とかを請求するしかないのかもしれません。

  判例にこんなのがありました。 野球の専門学校に入学したところ、学校の説明と大きく違う
ので、理事長に債務不履行責任を認め、入学金・授業料122万円の返還と慰謝料75万円の
支払いを命じていました。 初め慰謝料として150万円請求していましたが、裁判所はその半分
を認めたのです。  このように、債務不履行でもこれくらいの慰謝料が取れる場合があるの
です。
                        ж

  さて、不法行為で物を壊された場合を物損といいます。 例えば、恋人から贈られた大切な
ヘルメスのハンドバックをたまたま使用して、車に轢かれメチャクチャになったという場合など
です。 原則として修理代が損害になります。 では、慰謝料は請求出来るのでしょうか。 
判例では慰謝料はまず認められないようです。 精神的損害は修理代相当額の弁償により
癒されたと考えるからです。 
  ただし、これにも例外があります。 物が特別に精神的な価値を有する場合です。 例えば、
品評会でチャンビョンになった犬とか、血統の競走馬を死なせたという場合などです。 特別な
愛着を抱いていた物として、判例は慰謝料を認めています。
                  
  では、先のヘルメスはどうでしょうか。 特別な愛着を抱いていたという点では同じですし、
本人にとっては特別に精神的価値を有する物といえるでしょう。 中古自動車のように代替性
がある物と同じには、論じられません。
  私は慰謝料が認められる余地はまだ残されていると考えるのです。 慰謝料は裁判官の
匙加減で決められます。 ですから、いかに精神的価値のある物かを説明する能力に掛かっ
ているとも云えるのです。
 ですから、内容証明郵便で債務不履行を理由に契約を解除する場合、取敢えず支払代金
の返還請求と同時に損害賠償や慰謝料も請求して見る事は決して無駄ではないと考えます。
         



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