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   代理人なら当然出来る保存行為・管理行為

  代理人の権限は本人が授権した範囲により決まりますが、その授権した範囲が不明確な場合でも下記の通り
民法で代理人に保存行為と管理行為についての権限が代理人であるというだけで当然に認められています。    

「権限の定めのない代理人は次に掲げる行為のみをする権限を有する」(民法第103条)。
  1号 保存行為   
  2号 代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内においてその利用
     又は改良を目的とする行為
       ※ 2号の利用行為と改良行為を →管理行為といいます。

 簡単に云いますと保存行為と管理行為なら本人の委任状がなくても代理人の判断で出来るのだということです。    
しかし、保存行為や管理行為は当然に出来ても、変更行為(通常は処分行為も含む)になると本人の授権がない限
り出来ません。
  また、民法第252条但書では各共有者の権限として保存行為を定めています。  保存行為は共有者の一人が単
独で出来ますが、管理行為は共有持分の多数決の賛成が要件ですし、変更行為になると全員の同意が要件になっ
ています。
                       
  さて、この保存行為の中身については法文上で定義されておらず、、判例や学説の解釈に拠れば財産の現状(価
値や機能)を維持する為の行為とされています。
 財産の現状を維持する行為であれば本人や他の共有者の不利益とならないので、権限の定めのない代理人で
も保存行為の権限があって然るべきだと考えられているのです。
  以下に保存行為の具体例を整理して見ました。

・消滅時効の援用・・・・時効の援用により財産の現状は維持されます。
・家屋の雨漏りの修繕(部品の購入、業者との請負契約)、土砂崩れ防止の為の土砂留
 ※ 修繕により交換価値が変わらない限り保存行為とされ、交換価値が上がれば改良行為となる。
・被担保債権の完済後に共有者の一人が単独でする抵当権抹消登記申請
・時効の中断、未登記不動産の登記、必須の費用(公租公課・保管料等)の支出
期限が到来した債務の弁済、腐りやすい物を処分して金銭に換えて保管する
 
→「本人財産全体から見て現状維持と認められるような処分行為であるので、
   保存行為に当る」(最高裁昭和28年12月28日判決)
・持分権に基づく妨害排除請求(大審院大正10年7月18日判決)
・持分権に基づく損害賠償請求(最高裁昭和51年9月7日判決)
・共同相続人の一人が単独でする登記簿上の名義人に対する所有権移転登記の
 全部抹消請求(最高裁昭和31年5月10日判決)
・相続財産管理人→相続財産に関する訴えに対する応訴(最高裁昭和47年7月6日判決)
・不在者財産管理人→不在者を被告とする建物収去・土地明渡請求事件の控訴・
              上告(最高裁昭和47年9月1日判決)
                        

  次に、民法第103条2号で代理人の権限とされる利用行為改良行為には以下の具体例があります。

利用行為 → 目的物を変更しない範囲で財産の収益を図る行為をいいます。
  例 賃貸借契約の締結、 金利を付けて金銭を貸付ける
     現金を定期預金にする
改良行為 → 使用価値・交換価値の増加を図る行為をいいます。
  例 賃貸借契約の解除 (最高裁昭和39年2月25日判決)
    使用貸借の解除   (最高裁昭和29年3月22日判決)
    家屋に造作を施す、 無利子債権を有利子債権にする、
    
  なお、目的物の形状や性質を変えてしまう行為は変更行為であり、本人の委任状が必要になります。   
また、共有者の一人が変更行為をするには共有者全員の同意が要ります(民法第251条)。
  例 田を宅地にする、 共有山林の伐採、共有地全部への地上権設定、
    売却行為及売買契約の解除
                     
  さて、代理人には任意代理人と法定代理人があり、不在者財産管理人というのは法定代理人に当ります。    
不在者財産管理人は行政書士でもなれ、保存行為や管理行為は不在者財産管理人の権限で出来ます。    
また、高齢者の財産管理という新しい分野があり、代理業務は行政書士にとって開拓が期待出来るフロン
ティアのような分野と云えます。
                                           2011.3.5


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