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                   内容証明郵便でブレイク !   行政書士田中 明事務所

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    内妻にも出る遺族厚生年金

  婚姻には法律婚と事実婚があり夫婦共同生活はあっても婚姻届を提出していない場合を事実婚といい、
事実婚の妻を特に内妻とか内縁の妻といいます。 
  内妻に相続権はありませんが判例により法律婚の妻と殆ど変わらない法的保護が与えられています。    
しかし、事実婚の場合、経済的な理由で同居していなかったり住民票も別々だったりすると、外見上愛人関
係と区別され難いという面があります。
  当事者の婚姻意思と夫婦共同生活の実態があれば事実婚は成立しますが、挙式を挙げていない為外部
の人間は婚姻意思を推測するしかないからです。
                     
  さて、事実婚の配偶者が遺族厚生年金の受給資格者に含まれることは厚生年金法第4条に明文で規定さ
れています。
  ただし、内妻が請求するには戸籍謄本等や住民票の他に生計同一関係申立書というものを添付する必要
があり、特に別居していたり住民票が異なっていた場合には経緯や理由を丁寧に書いて提出することが必要
になります。
 
  生計同一関係申立書には第三者の証明と云って民生委員とか施設長の印鑑が必要になりますが、これは
形式的なもので当事者と利害関係のない第三者であれば誰でもよいとされ、実質的な生計同一・生計維持関
係があるかが決裁の決め手になります。  同居していない内妻の場合でも内縁の夫からの定期的な生活費
で生活しており、かつ定期的な訪問や通信があれば生計同一関係があるとされる筈ですし、生計維持関係は
生計同一要件と収入要件(課税証明書)を充たせばあると判断されます。
                       
  ついでに内妻と日常家事連帯債務の関係について触れますと、内妻も民法上は法律婚の妻と変わりない
扱いがされて日常家事についても連帯債務を負うことになります。
  では、夫が自宅で保険の効かない高額な延命治療を受けた末に亡くなった場合で収入は年金月額15万円
だったのに対し、月額40万円の医療費を負担していた場合にはこの高額な医療費は日常家事に含まれるの
でしょうか。
  我妻榮博士に拠れば、日常家事を「その範囲は、各夫婦共同生活の社会的地位・職業・資産・収入などに
よって異なるのみならず、当該共同生活の存在する地域社会の慣習によっても異なる」としています。
  判例では収入が17万円の夫が57万円の学習教材を購入した場合、日常家事の範囲外としたものがあります。
  結局、支払能力を超える債務は日常家事に含まれないとされる余地があり、業者としては内妻を連帯保証人
にしていない場合には夫の相続人に請求しなければならないいうことも起こりえます。
                       
  最後に、夫が病気療養中の場合、必要な医療費の支払いに当てる為に夫が内妻に印鑑を預けて夫名義の
銀行口座から預金を下ろすよう指示する場合があります。
  銀行実務でも、担当者が内妻として認めており使用目的が日常家事の範囲内と認識している場合には本人
にその都度意思確認をせずに下ろしているようです。
  しかし、田舎に行くと内妻の法的保護などの認知度はまだ低いですから、財産目当てに遠戚の者がしゃしゃり
出て来て内妻を排除したりしてトラブルになることがあります。
 このような者が本人の印鑑と通帳を持って銀行に現れた場合、担当者が本人と長い付き合いがあっても銀行
が本人確認をしなかったとしたら債権の準占有者への弁済民法478条)が成立する余地はありません。
 内妻関係や高齢者財産管理の分野はこれから業務の確立が大いに期待されているフロンティアに思われます。




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