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      空クレジット契約と連帯保証人

 
資金繰りで苦しくなった販売業者がしばしば陥る罠に空クレジット契約があります。
空クレジット契約というのは、売買契約が存在しない架空のクレジット契約です。 クレジット
会社が立替金を支払った後に販売業者が倒産して、空クレジット契約が発覚することが多い
ようです。
  さて、空クレジット契約の連帯保証人になった者の責任はどうなるのでしょうか。 売買契約
とクレジット契約は別契約であるとするのがこれまでの判例の態度でした。 
  しかし、最高裁はクレジット契約の構造に着目してこれを改める判決を下しました。 つまり、
売買契約の不存在につき知らなかった連帯保証人には法律行為の要素に錯誤があったとして、
連帯保証契約を無効としたのです。
 判決理由にこうあります。
「  保証契約は特定の主債務を保証する契約であるから、主債務がいかなるもので
 あるかは、保証契約の重要な内容である。 そして、主債務が商品を購入する者が
 その代金の立替払いを依頼し、その立替金を分割して支払う立替払契約上の債務
 である場合には、商品の売買契約の成立が立替払契約の前提となるから、商品
 売買契約の成否は原則として保証契約の重要な内容である
と解するのが相当
 である。」   (平成14年7月11日最高裁判決)   → 参考
                       
  この最高裁判決は、クレジット契約の構造に着目した点で大変画期的なのです。 即ち、
売買契約と立替払契約と保証契約の相互牽連性こそクレジット契約の構造であると認定して、
販売契約とクレジット契約は別契約と考える従来の判例を否定したことに他ならないからです。
                        

  今度は 架空の売買契約書や架空のクレジット契約書に自分の名義を冒用された場合、
名義を冒用された本人の責任はどうなるかという問題です。
<事案> 自動車販売業者から車の登録名義に使わせてくれと云われてAが承諾したら、
   実際にはA名義がクレジット契約に使用されていたという場合で、クレジット会社
   からの電話に対しAはハイと応えていたケース。

 判例ではまずクレジット契約の成立を認めたものの、Aにはクレジット契約の債務者になる
意思はなかったとして、相手方が真意でないことを知り又は知り得ることができた場合には、
意思表示は無効になるとしました。 つまり、民法第93条但書を適用したのです。

  次に、クレジット会社と販売業者の関係ですが、クレジット会社は販売業者に対して顧客
より与信の申込みを受けることを委託しており、販売業者は与信契約締結の為の事務手続
きの一切を行っているとし、 代理権はないとしても実質的には代理人に準じる立場あると
認定しました。 そして、販売業者がAに契約締結の意思がないことを知り又は知ることがで
きたときは契約の効力を主張出来ないとしています。
             (平成12年9月28日東京高裁判決)   → 参考
 
  結局、本判決では名義を冒用されたAにクレジット契約の債務を負担する義務はないと
されたのです。
                       



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