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               裁判所をうまく使いこなす方法!
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契約書に印鑑があれば裁判で勝てるか

  いよいよ民事裁判の審理とはどんなものなの、という話になります。   契約書と言えば最も代表的な
書証です。   裁判所が契約書を真正に成立した文書と認定しなければ契約そのものの有効性も認め
られないのが通常です。

  さて、真正に成立した契約書とされる条件とは何なのでしょうか。   日本では契約書に署名と印鑑を
貰うのが通常です。    押印するのは慣習でそうしているだけで印鑑がないと契約書が無効というわけ
ではありません。   

  しかし、いざ訴訟に舞台が移されると印鑑が俄然重い意味を発揮します。   つまり
「私文書は、本
人又は代理人の署名又は押印があるときは真正に成立したものと推定」されるのです(民事訴訟法
第228条第4項)
。  → 本人の印鑑かどうかは、印鑑登録証明書によって簡単に立証出来ます。

  次に、「私文書の作成名義人の印影が、その名義人の印影によって押印された事実が確定された
場合、反証がない限りその印影は本人の意思に基づいて押印されたものと事実上推定され文書
全体の真正が推定される
」(最高裁昭和39年5月12日判決)
のです。

  従って、本人の印鑑と印鑑登録証明書があれば例え他人が押印した場合であっても、反証がない限り
本人の意思に基づき作成された真正な文書であると裁判所は判断してくれるのです。
                          
  さて反証とは契約内容を知らされずに印鑑を預けていた他人が勝手に押印したなどと本人が契約意思
を否認する主張をいいます。   これでよく問題になるのが連帯保証人の保証意思の否認です。   

  連帯保証人本人から「連帯保証契約の内容を知らない。   印鑑を預かっていた妻が勝手に代行して
印鑑を押し署名を代筆したのだ」と主張される場合などがそうです。
  尤もこの場合でも債権者が連帯保証人に意思確認をしている事実を立証出来れば反証は認められない
はずです。

  しかし、債権者が連帯保証人に対する意思確認を怠っていたとしたらこの立場は忽ち逆転してしまうこと
になります。    つまり、連帯保証人に反証ありとして連帯保証契約の成立を否定される可能性が一気
に高まります。    この場合には本人の印鑑があっても勝てなくなるのです。   
岡山地方裁判所平成15年3月3日判決では意思確認がないとして連帯保証契約を否定しています。
            
 
結局、契約書に本人以外の者が代行して署名・押印する場合には、別途本人から自署を貰い、
かつ本人に契約内容の説明と契約意思の確認をして
記録に残すことが勝利する為の最低条件
なのです。

                
参考 →私文書の印鑑に関する2段の推定について
証明責任、本証、反証について

  証明責任というのは審理を尽くした裁判官が心証を形成するに至らなかった時に判決を下し、裁判の
勝敗をつける時に使われるものです。   もっと平たく言うと証明責任を負う方が立証に成功しない限り
敗れる
ということです。

  判例に沿って見ましょう。  上記の岡山地裁判決では、「被告は連帯保証したか」ということが争点です。    
そして、連帯保証人が保証意思を否認し真偽不明の域を出ないところまで反証したので、連帯保証契約の
成立に関する証明責任が、債権者に負わされています。

  債権者はここに来て契約成立の本証を求められたのです。

 本証とは →事実の存在について確信を裁判所に抱かせることです。 これに対して、

 反証とは →その存在について真偽不明に陥らせることで足りるとされます。

  結局、連帯保証契約の成否は連帯保証人の反証により真偽不明とされたのに対して、債権者の本証の
方は本人への意思確認を立証出来ずに失敗に終わり「連帯保証契約は成立していない」という判断、
つまり原告敗訴の判決が下されたのです。

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